映画やドラマ、CM、ミュージックビデオで欠かせない「VFX(視覚効果)」。
本記事では、VFXの意味やCG・SFXとの違い、映像制作における役割をわかりやすく解説します。また、仕事内容や学び方、必要なスキル、キャリアの展望まで紹介するので、「VFXを学びたい」「映像業界で働きたい」と考えている方はぜひ参考にしてみてください。
VFX(視覚効果)とは?CGやSFXとの違いは?
VFXの定義と役割
VFXとは、「Visual Effects」の略で、映画やドラマといった映像作品におけるCGを用いて視覚効果を加える技術のことです。VFXを使えば実写映像に現実には存在しない要素を加えたり、撮影した映像に映り込んだ余分な要素の除去などに用いられます。
実際に映画やドラマ、CMでは、アクションシーンで映り込んだワイヤーやクレーンを消したり、爆発や炎、魔法のエフェクトなどを加え、映像に迫力を出すなどの用途で用いられています。
CGとの違い
そもそもCGとは「Computer Graphics(コンピューターグラフィック)」の略なので、コンピューターで作成された素材そのものを作ることを示します。
それに対しVFXはCGを使って映像を作成し、実際の映像と組み合わせて加工する技術のことです。
CG | VFX |
生成 | 加工・合成 |
SFXとの違い
SFXとは、「Special Effects(スペシャルエフェクト)」の略で撮影現場で特殊効果(爆破、火花など)を加え現実にはありえない映像を作り出す技術のことです。
VFXは撮影後に加える効果であるのに対しSFXの技術は、美術や舞台装置による撮影技術という違いがあります。
例えば、映画の撮影で1人の俳優が若者から老人を演じる際に使う特殊メイクはSFXに含まれます。また、ミニチュア・着ぐるみ・スーツアクター・火薬・爆薬・ワイヤーアクションなどが挙げられますが、現在ではそのほとんどがSFXでデジタル処理が出来るようになってきています
映像制作におけるVFXの役割と重要性
映像制作においてVFXはVFXクリエイターと呼ばれる人が行います。
VFXを使用している作品として挙げられるのが『シン・ゴジラ』などです。ゴジラや恐竜は現在は存在しない生き物ですが映画の世界ではまるで存在しているように思えます。これらの効果を生み出して映像の世界観を支えているのがVFXクリエイターです。
近年では映画・CM・配信コンテンツすべてでVFXが導入されてます。なのでVFXクリエイターは映像制作において「欠かせないポジション」です。
VFXの仕事内容|映像制作フローで見る役割
映像制作の流れの中でVFXは撮影後の編集作業で関わってきます。映像制作の現場において、3dsMAX、Maya、AfterEffects、Photoshopといった映像ソフトを使いながら、収録された映像に効果をつけるのが、VFXクリエイターの主な役割です。基本的には細かい指示の入った依頼書に沿って効果をつけていきますが、より臨場感や迫力のある映像が作れるかどうかは自分の技術次第。エフェクトに関する知識だけでなく、元となる映像に対する知識や、現象に対する柔軟なイメージを働かせることが大切です。
実写では撮影不可能なカットをフルCGで作成
実写で撮影することが不可能なカットを作成します。例えば、ファンタジー作品の実際にはどこにもない風景などの空間表現や危険な撮影の代替で使用することがあります。2Dで作成することも多いですが、MAYAやMAXなどのツールを使って3Dで作る場合もあります。
CGと実写を合成する
NukeやFlareなどのコンポジットツールを用いたグリーンバック撮影との組み合わせで、CGで作成した背景に人物を合成したり、CGで作成したオブジェクトを実写に合成したりします。
撮影条件によりグリーンバックなどの撮影ができない場合は、マスクを手描きで作成したり、動きに合わせて1コマずつ調整していくこともあります。
戦闘映画などでも使用され実際には数十人の群衆を何百人に見えるCGを用いています。
映像の加工・修正・消し込み
時代劇の撮影時に移り込んだ近代的な建物やワイヤーアクションのワイヤーなど、撮影素材には実際は要らない物も映ってしまいます。VFXでは、こういう物の消し込みをします。また、衣装や建物などの物の質感や光の調整でリアリティを高める加工も行います。
VFXクリエイターに必要なスキルと適性
提案力と予算管理
VFXを作成するにあたり、どのように撮影するかを予め決定できることが大事です。
例えば、VFXで合成するカットでは映像の合成がしやすいように、グリーンバックで撮影するといった具体的な提案をすることで、作業が効率良く進みます。日本のVFXが世界から注目される理由は低予算でハイクオリティを実現していることです。VFXの質が映画の出来を左右するとも言われるなかで、映像のクオリティーを維持しながら予算に収める力がクリエイターのスキルが問われます。
専門的なVFXスキル
視覚効果は3dsMAX、Maya、AfterEffects、Photoshopといった映像ソフトを用いて作っていくため、それらのソフトを使いこなせる専門的な知識や技術を磨いておかなければなりません。
また、新しい技術や表現方法に対するアンテナも高く張っておき、時代の変化に合わせて自分自身も変わっていく姿勢が求められるでしょう。
コミュニケーション能力
VFXクリエイターはディレクターと相談しながら作品の世界観やカットの印象などを作り上げるため、相手の意図を汲み取り、自分のイメージを分かりやすく伝える高いコミュニケーション能力いわゆる監督・CGチームとの協働力が求められます。
集中力・根気
VFXクリエイターが作る視覚効果のクオリティは、作品全体の評価を左右します。またその作業は膨大なため、1つ1つの細かい作業を集中して正確に根気強く行えることが求められます。
デッサン力・立体造形力
VFXは、それがまるで現実に起こっているかのように錯覚させることができてこそ、真価を発揮するものです。そのため、クリエイターの空間認識能力や造形感覚が映像クオリティーを左右します。なので、単に映像ソフトを使いこなせるだけでなく、立体的な表現ができる高いデッサン力や立体造形力も必要になってきます。
VFXを学ぶ方法|独学・専門学校・スクールの選び方
VFXクリエイターになるために必要な学歴や資格は特にありません。ただし、専門的な知識やスキルを問われる仕事でもあるため、未経験からチャレンジするのは難しいでしょう。VFXを学ぶための手段は2つあります今回は以下の2つを比較していきましょう。
独学で学ぶ方法
独学はまず、自分自身で勉強用のソフトや書籍を購入またはYouTubeやUdemyなどのオンライン教材を探すことから始めます。そして、コツコツと自主学習していきます。ここでのメリットは、あまりコストをかけずに勉強できるという点です。しかしデメリットとしては、質問やフィードバックを受けにくい点や自身の継続力があるかで学習が左右されるという点です。
スクール・専門学校で学ぶ方法
一方、スクールや専門学校で学ぶ場合のメリットは、学校によって体系的なカリキュラムが組まれており効率的に授業をうけることができ、質問やフードバックも受けやすい環境ということです。また、学校によっては業界のネットワークや就職支援等のサポートも受けることが出来るので卒業後の道もしっかり見据えることができます。しかし、デメリットとしてはかなりのコストがかかるという点です。
学習方法の比較表
つまり、独学=安価だが継続力が必要、スクール=費用がかかるが効率的ということになります。
費用 | 期間 | 就職サポート | |
独学 | 低コスト | 1年以上 | なし |
スクール | 高コスト | 4ヶ月~1年程度 | あり |
VFXの将来性とキャリアの展望
近年、VFXは映像業界での需要が拡大傾向にあります。その為、映画・ドラマだけでなく配信コンテンツ・広告でも必須になっています。さらに、ゲーム・VR・メタバース領域にも活用が拡大しつつあります。また、VFXクリエイターとしてのキャリアパス(企業就職・フリーランス・海外進出)が非常に多様化しつつあり、様々な方面や方法で活躍していくことができます。
VFXは、今後もさらなる技術進化とクリエイターとしてのキャリアパスの多様化がますます進み、自身に合ったワークバランスで活躍することが期待されています。
まとめ|VFXを学んで映像制作の世界へ
本記事ではVFXの「定義・違い・仕事内容・スキル・学び方」をご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。VFXはCGを用いて視覚効果をもたらす技術であり、存在しない生き物や物も映像の世界ではまるで存在しているように生み出して映像の世界観を支えている映像制作ではとても重要なポジションです。また、技術以外にも様々なスキルが求められることも忘れてはなりません。資格が必要でない分継続的な学習で学び世界など様々な場所で活躍できるVFXクリエイター。また、今後さらに需要が拡大する領域でもあります。学び方を選んでキャリアを築くことが重要です。