AD(アシスタントディレクター)は、映像制作の現場を支える重要なポジション!
AD(アシスタントディレクター)は、映像演出を担うディレクターのアシスタントとして現場を支える重要なポジションです。映像業界の特に「企画制作」をおこなう部署で勤務したい場合は、ADとして映像系の企業に入社します。
また、ADがディレクターに昇進するには約3~5年ほどかかると言われています。もちろん社内人事次第で自身の昇進タイミングは変動しますが、いち早く自身が映像制作の現場から評価され、はやく下積み時代を終わらせたいと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、そんな方に向けて『ADの評価基準』や『評価されるADの特徴』などを、ADの採用をおこなっている現役の採用担当がお答えします!
テレビ業界をはじめとする映像業界の入社試験対策として、ぜひ読んでみてください。
ADの評価基準とは
一言にADといっても、バラエティ番組や情報番組、報道番組、スポーツ番組といったジャンルが存在します。(ドラマの演出をおこなうポジションは監督・助監督という呼称で業務内容も異なるため、今回は除外します。)
そのため、番組の方針や映像制作の工程(生放送か、収録ものか等)が異なりますが、ここでは各ジャンルで共通する評価基準を紹介します。
映像制作の流れを十分に理解し、問題が発生しても臨機応変に対応できる
映像制作は、企画・制作をおこなう部署だけではつくることができません。制作部が、他部署や外部の企業に所属するカメラマンや音声、照明、大道具、小道具、編集エディター、演者(出演者)といった様々な業界関係者に企画の意図を伝え、1つの映像を制作します。そのため多くの工程が存在し、それに伴い様々なパターンのトラブルが発生します。
なので、AD時代からこの問題は「どの部署に対して」「どのように動いてもらえば」「どのくらいの所要時間で解決できるのか」を瞬時に整理し、上司であるディレクターの確認や指示のもと素早く対応しなければなりません。このような対応は番組制作の流れを十分に理解していないとできないことなので、何か問題が発生してもすぐに動けるADは評価に価すると言えます。
また、自身がディレクターの立場になってから現場でトラブルが発生した場合は、ADや関係者に対して迅速に的確な指示を出す必要があるので、AD時代に十分な経験を積んでおく必要があります。
ディレクターやプロデューサーのみならず、ADや社外の人間と円滑に業務ができるよう関係構築ができている
ディレクターというと、独自の世界観や自身が面白いと感じたものを表現する仕事だからこそ「変わっている人が多い」「協調性が無さそう」と思われがちですが、映像制作は基本的にチームプレイなので円滑な人間関係が築ける方が多いです。そのため、コミュニケーション能力が高く、細かいところに気付いてフォローできるADが評価されます。
とはいっても、「会話を盛り上げなきゃ」「相手に良く思われなきゃ…」「仕事ができると思われたい…」と自身を追い詰めすぎてもパフォーマンスに影響してしまうので、AD時代に評価されたければこんなところから始めてみましょう!
【例】
■通る声で明るく挨拶をする。
■ディレクターやAD、演者などが困っている素振りを見せたら素早く「どうかされましたか?」と声をかける。
■多くの関係者が参加するスタジオ撮影業務の際は、特に視野を広くして業務に取り組む。
■多くの関係者や1回きりの取引先ともよく仕事をするが、まずはいち早く担当者の名前を覚える。
■番組スタッフに対して日常的に「早くディレクターになりたいんです!」とアピールする。
(よりディレクターや先輩ADが「この子をしっかり教育したい」と思ってくれるように、自身の向上心をアピールする。先輩から自分に関わってくれるキッカケになります。)
■よく発生するトラブルには、事前に先回りをして対策をしておく。
■業務量や自身のスキルの関係で新規の業務を引き受けられない場合、きちんと「できない」と意思表示をおこない、さらにそれに対しての対策を考える。
自分のポジションを明け渡せる後輩をしっかり育成できている
ディレクターに昇進できるということは、ADの中でも上のポジション(ディレクターに近い)ということです。そのため、自身が担っていた『中堅ADのポジション』を担当できる後輩ADが育っていないと、自身が昇進するのは難しいです。現場からは、自身の技術向上のみならず後輩の育成も積極的におこなうことが求められます。
もちろんディレクターや他のスタッフで協力しながら人材育成はおこないますが、自分がディレクターになりたての時に力強くサポートをしてくれる後輩がいれば、自身が慣れないディレクター業務で苦戦していたとしても円滑に映像制作を進めることができます。
未来の自分や番組のためにも、人材育成には特に力を入れておきましょう。
評価されるADの特徴
ここまでは、ADの評価基準をご紹介しましたが、ここからは評価されるADの特徴を様々な角度から紹介してゆきます。
細かい部分に気付ける・不安要素を残さない
映像制作は、画面に映る全てのものに気を配らなければならないため「この注釈のウラドリが曖昧ではないか?(事実関係がハッキリしていない)」「ロケ準備に不安要素が残っている(漏れ無く許諾が取れているか等)」という疑問や不安は、放置しておくと場合によっては制作進行に大きく影響します。
そのため、心配性なくらい『確認』と『共有』ができる人が、映像業界では評価されます。マイナスイメージのある『ネガティブな性格』でも、『神経質』でも、細かい部分まで配慮できるという側面があれば、映像制作の人材として適性があると言えます。
とは言っても映像制作はチームプレイなので、あまりにもマイナスな発言が多いと現場の空気を悪くしてしまいます。なので例えば「この企画はまだシミュレーションが足りなくて不安だから、もう一回時間をつくって検証しようよ!」「今回の企画は医療用語が多くて不安だから、テロップチェックをADの中でも複数人でおこなおうよ」といった、事前に不安要素に気付いて解決しようと動くようにしましょう!
日々の業務を「勉強」にも転換できる
新人に対して大がかりな研修を開催するのではなく、オンザジョブで学んでゆく業界なので、日々の業務を勉強として取り組める人材は評価されます。
例えばADの中でも苦手という声がある『文字起こし』(収録映像内での会話を文字に起こす業務)。これは、ただ聞こえた音の情報を文字に変換するという単純作業にすることもできます。
ですが勉強する姿勢を取り入れることで、収録映像を見ながら「どうしてディレクターはここで、こんなふうに話を膨らましてほしいとカンペで指示を出したんだろう」「どうしてディレクターはインタビュー相手にこんな質問をしたんだろう」と、映像の内容を考えながら文字起こしをおこなうだけでも成長の度合いが異なります。
また、ディレクターからの台本の修正依頼も「もっと早く言ってよ!」と思うかもしれませんが、修正をする中で「どうしてディレクターはこの部分の構成を変えたんだろう」と考え、ディレクターに対して雑談の中で変更の理由を聞いてみることで、ディレクターからの評価も変わり、自身の考え方も大きくステップアップすると思います。
一見雑務や単調な業務に見えるものでも、考え方ひとつで大きく成長につながります。そんな人材が現場では評価されるでしょう。
目標が明確で、その目標に向かって正しい努力をしようと努力している
実は、ADは約3年以上のキャリアを積むと『アシスタントプロデューサー』というポジションに異動できる可能性が出てきます。
これは、プロデューサーになるにあたってでも番組制作経験を積む必要があるため、ディレクター志望でもプロデューサー志望でも、まずはADを3年以上経験する必要があるからです。
つまり現役のADには、大まかに以下の人が存在します。
①「まっすぐディレクターになりたい人」
②「元々プロデューサーになりたくてADをやっている人」
③「ディレクターになるかプロデューサーになるかは、ADを数年経験してから考えようと思っている人」
こうなると、「気持ちがどちらにも定まっていない人」と「ディレクターに絶対なりたい人」では、モチベーションやAD期間に様々なものを吸収しようと努力する差が顕著に表れます。さらに現場では将来の目標がしっかりと定まっていて、モチベーションの高い人材により良い業務を与えたいと考える傾向にあります。
そのため、最初から目標がしっかりと固まっている人の方が現場も自分自身もメリットが多いです。映像業界に入る際は、しっかり業界研究をしたうえで将来像を固めてみましょう!
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ADの評価基準は基本的に『映像制作技術』に関わるものが多いです。そのため、日々のAD業務の中でしっかりと勉強をする必要があります。ですが、評価されるADの特徴は『心構え』や『姿勢』といったものが多いので、学生時代からでも取り入れることができます。
学校での課題の取り組み方やアルバイト先での対応などに応用できるので、ぜひ日常生活に取り込んでみてはいかがでしょうか?