chatGPTが登場し大きな注目を集めたことから、生成AIが何かと話題になっていますね。今回はテレビ業界でAIがどのように活用されているかをまとめていきたいと思います。
生成AIってなに?
生成AIとは、文章や画像などを、文字通り「生成」するAI技術のことです。その代表例である「ChatGPT」は、人間との対話に近い“自然な文章”を生成するAIチャットサービスです。実際に何ができるかと言うと、「翻訳」、「文章の要約」、「プログラミングコードの生成」など多岐にわたります。ChatGPTを使うと、キーワードを入力するだけで“それっぽい”文章を作ったり、長文を簡潔に要約したりなどができるため、さまざまな業務の効率化や品質向上が期待できます。そのため、ビジネスシーンでも大きな注目を集め、さまざまな企業が導入しています。他にも画像や音楽、動画を生成するAIもあります。
テレビ業界ではAIはすでに使われていた
では、実際にテレビ業界でAIはどう活かされているのか?
スポーツの生中継では、2017年頃から使われています。
例えば…
マラソンなどのロードレースでは、選手と選手の距離が何メートル離れているのか?
この距離差計測はずっと課題だったそうです。
ロードレースでは試合が進むにつれ選手がどんどんばらけていきます。そうすると中継車は追いかけるのが大変です。機材も人も増やさなければならなくなります。
その課題を解消するためにAIが導入されました。
中継車に搭載されているGPSと連携させて、1台のカメラ映像で距離を測れるように学習させ、テロップで距離を表示できるようになりました。
駅伝中継の順位や選手間の距離、タイム差がリアルタイムで画面表示されているのも、AIです。
スポーツ中継とAIの技術は相性がいい
ラグビーなどのチームプレーでは、選手の顔認識とCGシステムを組み合わせて、選手紹介CGがすぐに表示できるようになりました。わずか0.2秒で顔認識できるといいます。
サッカーでは、170度の広角エリアを無人カメラがカバーしており、選手を追いかけること、ボールを追うことが可能になりました。これもAIが搭載されているカメラだからこそです。
プロ野球では、次の投球を予測して、CG表示をしたり、得点が入る確率を予測したりともっと野球が楽しめる工夫がされています。
報道番組にもAIを活用 一刻を争う速報にAIを活用
報道番組では、記者会見の様子やインタビューなどの音声素材を書きおこす作業にAIを活用しています。
事件事故のニュース速報や、投票の速報など、テロップで情報を入れる時のテキスト原稿の生成をAIが行っていることもあります。
2018年頃には、音声データを学習させて、合成音声で実況をしたり、ニュース原稿を読ませることも一部で始まっています。
選挙特番にAIの顔認証を活用
顔認証はAIの得意とする分野です。
スポーツ選手の顔認証は先ほど説明しましたが、他にも選挙特番などで活用されます。
候補者ひとりひとりの名前にテロップをつけるのは、絶対に間違えてはならないという緊張感を伴うため、相当労力を使います。
それをAIがやってくれるおかげで、確認する工程がかなり削減されたといいます。
背景の映像にあわせてテロップの加工をしてくれるAIで、現場の仕事が軽減
他にも、映像に店の看板やポスター、文字入りのTシャツを着ている人に、テロップが重なるのは放送事故とみなされる場合があります。
生放送の時には、その処理が間に合わないことがありますが、AIによって、自動的にテロップに背景をつける(マスキングする)ことができるようになったため、生放送での提供テロップを挿入するときに重宝されているといいます。
また、テレビ番組を他のメディアに転載する時の、テキスト化や要約もAIが担っています。
とはいえ課題もある 生成AIの危険性
一方で生成AIについて現場の理解が追い付いていないという現状もあります。
TBSの報道番組「サンデーモーニング」が、2023年11月5日に番組内で紹介した「生成AIで作られた画像」について、その確証が得られなかったとして謝罪した騒動がありました。断定した表現を用いたことで、結果的に「誤報」となってしまいました。
私たちの生きる時代は、SNSの普及によって、リアルタイムに情報が共有されています。その結果、ファクトチェックが疎かになったり、「ネタに釣られてしまう」という恐れもありますよね。
「フェイクニュース」があふれる今、1つ1つの情報に対し、生成AIがつくったものか、そうでないかの判断をしっかりやっていくことも重要になってきます。
私たちは生成AIを便利に使いこなす方法を探りながら、生成AIに騙されないよう注意をしなければならないのです。これはテレビ業界だけでなく、社会全体が抱える問題でしょう。
海外では…続々と生成AIキャスターが誕生
AIキャスターによるニュースサービスがアメリカで2024年にスタートしているようです。
AIで生成されたキャスターやリポーターたちの表情や身振りはいずれも人間味にあふれていて「私は何語でも話せますよ」と日本語をしゃべるシーンもありました。
他にも、2023年にはすでにスイスの放送局「M Le Média」が新たな女性気象予報士にAIアバターを起用しています。インドのニュースチャンネル「OdishaTV」でも人工知能(AI)で生成したニュースキャスター「Lisa」が試用されています。
まとめ
AIはすでに報道番組やスポーツ中継で活用が進んでいます。
プロ野球中継やワールドカップ、オリンピック、箱根駅伝などでは、新しいAI技術が登場するとその紹介をされることもあります。
新しい技術がいち早く見れるのもスポーツ中継の楽しみかもしれません。
テレビ業界は人の労力をいかに削減できるかを考えてAIを積極的に取り入れていますが、まだまだ正確性に欠けるところもあるので、そこと上手く付き合うことが今後の課題となりそうです。