震災や有事、不祥事などのさまざまな理由でテレビCM放送が自粛されたとき、代わりに「ACジャパン」のCMが流れますよね。テレビを見る人なら一度は目にしたことがあるかと思いますが、このACジャパンとは、いったいどんな団体なのでしょうか。今回はテレビCMでよく見る公共広告「ACジャパン」の役割や仕組みについてご紹介します。
ACジャパンとは
公式サイトによると、ACジャパンは1971年に「関西公共広告機構」として大阪で設立された団体です。1974年に全国組織の「社団法人 公共広告機構」となり、2009年に「ACジャパン」へ名称が変更されたあと、2011年に内閣府の承認を得て公益社団法人として活動するようになりました。設立当初は114の会員数から始まりましたが、2024年3月31日現在では1034社が加盟しています。
ACジャパンの活動には公的な資金が一切投入されておらず、活動資金はすべて会員社と個人会員の会費によるものなんだそう。広告活動はキャンペーンと呼ばれ、「公共マナー」や「環境問題」などの普遍的なテーマから、時代の世相を反映したテーマ、大災害時の臨時キャンペーンなど、社会にとって有益なメッセージを広告の形で発信しているそうです。
CMとして視聴者が目にする機会が多いのは、不祥事や災害の発生時。非常事態になると、企業CMの代わりにACジャパンのCMが流れることが多くなりました。
ACジャパンのCM広告費はいくら?
ACジャパンのCM放送枠は、基本的に0円です。これは、テレビ局や新聞社などのメディアが社会貢献活動の一環として広告枠を無償で提供しているためです。CM制作にかかる費用については、映像制作会社、音響制作会社、タレント事務所への支払いなど、さまざまな制作費用が発生します。これらの制作費は、公益社団法人ACジャパンの会員である媒体社(放送局、新聞社、出版社、インターネット等)の会費収入や寄付金によって賄われています。
CM枠を差し替えたスポンサー企業が負担する場合もある
通常、企業がテレビやラジオの広告枠を購入してCMを流しますが、企業が何らかの理由で広告の放送を控える場合、その枠が空いてしまいます。この空いた枠を埋めるために、ACジャパンのCMが放送された場合、ACジャパンのCM広告費は、基本的にCM枠を差し替えたスポンサー企業が負担します。
放送局が負担する場合もある
一方、放送局側が番組編成上の都合でCMを差し替えるケースもあります。この場合、放送局が広告費を負担してACジャパンのCMを放送することもあるようです。つまり、ACジャパンのCM広告費は、多くの場合、スポンサー企業が支払った広告費がそのまま適用される形で成り立っています。
ACジャパンの収入源
ACジャパンの主な収入源は次の通りです。
①会員企業からの会費
放送業界、報道業界、広告業界など、広告関連の事業を展開する会員企業からの会費が主な収入源となっています。
②個人会員からの会費
一般の個人会員からも会費を集めています。
会員種別は、以下の通りです。
・正会員(企業)
・賛助会員(正会員社の事業所)
・個人会員
重要な点として、ACジャパンは公的な資金を一切受けておらず、活動資金を会員社と個人会員の会費で賄っています。また、広告枠はメディア会員社から無償で提供されているため、広告放送のための直接的な支出はありません。
なぜ東日本大震災時にたくさん放送されたのか
東日本大震災の時、ACジャパンのCMがよく流れていたことを覚えている人も多いと思います。中でも「ポポポポーン」というフレーズが印象的な「あいさつの魔法。」(企画制作:東急エージェンシー北海道支社)のCMは多くの人の記憶に残っているのではないでしょうか。
その他にも、宮澤章二さんの詩「行為の意味」を用いた「見える気持ちに」、岡崎慎司や長友佑都、内田篤人らサッカー選手の言葉で構成される「サッカー」篇、脳梗塞を患ったイビチャ・オシム氏が出演した「オシムの言葉」(日本脳卒中協会)など多くのCMが流れていました。
ではなぜACジャパンのCMばかり流れていたのでしょうか。
あえてCMは放送しない、自粛という形をとる企業が多かった
テレビCMはさまざまな理由で放送が自粛されることがあります。実は東日本大震災の時も、テレビCM自体は放送することができたのですが、あえてCMは放送しない、自粛という形をとるようにした企業が多かったのです。「日本がこんなに大変なことになっているのに、テレビCMを放送している企業はどういう考えなのだ」と思われてしまうのではないか、というのが企業側の見解だったのだと考えられます。
企業側の自粛の場合、原則として放映料の返金はない
地震発生直後はCMを放送していた企業も、数日経ってから放送を自粛したりしていました。ちなみにこういった災害時に予定されていたCMが放送されない場合や、企業の判断でCM放送を自粛する場合は、原則として放映料の返金はありません。東日本大震災に関しては災害規模も大きかったので、テレビ局によって対応もさまざまで、一部返金としているところもあるようですが、テレビCMは放映に際して、原則返金を行わない、という契約になっていることが多いです。東日本大震災の頃はあまりにもCM放送を自粛する企業が多かったため、ACジャパンのCMは1週間で1万3000本以上も放送されたそうです。
ACジャパンのCMにはどんな種類がある?
ACジャパンのCMは、トータルでは10種類以上のバリエーションがあるので、CM自体の数としては十分多いでしょう。それでも、差し替えによって1日で同じCMを見る機会が増えます。そのため、同じ出演者が出ているような印象が、強く残るのではないでしょうか。
最近ですと、全国キャンペーンCM「決めつけ刑事(デカ)」「ゆうちゃみの3日ぶん」のほか、特定団体の支援キャンペーンCMである「アイフレイルの歌」(日本眼科医会)、なかやまきんに君が筋肉を見せる「なかやま、検脈!」(日本心臓財団)、近藤真彦が出演する「往年のアイドル」(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)など、ACジャパンが2024年度キャンペーンとして制作したものを目にする機会があるかと思います。また、CMの差し替え自体は、ACジャパン自体の判断ではありません。
どの作品をいつどれだけ流すかはACの会員社である媒体社の判断
不祥事や大規模災害時に公共広告が増える仕組みについて、ACジャパンの事務局は、「毎年1回、公共広告を制作し、その公共広告作品をテレビ局様や新聞社様に納品しています。広告は原則としてテレビ、ラジオ、新聞、雑誌の4媒体用で、その他に交通・屋外広告を制作しており、どの作品をいつどれだけ流すかはACの会員社である媒体社の判断となります。テレビCMでは、媒体社が持つ広告枠の無償提供によりACジャパンの広告が放送・掲載されており、ACは媒体費用を支払っていません」と説明しています。
つまり、AC側は、会員社に毎年新しい作品を納品していて、いつ、どの作品を流すかというのは各媒体の判断によるということですね。
まとめ
今回はACジャパンの役割や仕組みについて詳しくご説明しましたが、いかがでしたでしょうか。ACジャパンのCMは、社会問題の啓発を目的としたもので、その広告費は企業や個人からの会費や寄付金によって支えられています。今後も目にする機会があるかと思いますので、是非、その辺りも念頭に置きながらチェックして見て下さい。