総合演出の役割とは
総合演出は、演出に関する総責任者として現場をまとめる役割があります。番組制作における演出とは、番組全体の雰囲気やカラーを決めることです。クオリティを管理する立場であり、プレッシャーや責任感をともないます。
また、番組制作には複数のディレクターが関わっていることもあり、それをまとめるのも総合演出です。周囲から信頼を得ることも重要で、カリスマ性などリーダーとしての資質も求められます。
総合演出の仕事内容
総合演出の主な仕事は以下のとおりです。
・番組の方向性決め
・番組で取り扱うネタの決定
・ディレクターへの指示出し
・MCとの打ち合わせ
・台本チェック
・スタジオ収録(場合によってはロケの立会い)
・VTRチェック
番組制作の一切に関わりながら、総合演出が最終的な判断をしていきます。
ディレクターが撮影・編集したVTRを確認し、納得いくクオリティになるよう修正の指示を出したり、最終的なOKを出したりすることも総合演出の仕事です。
総合演出と3つの職種の違い
番組制作は、プロデューサーやディレクターなど、さまざまな職種のスタッフが連携しながら進めていきます。ここからはテレビ業界の他職種と総合演出との違いについて解説します。
プロデューサーとの違い
総合演出は番組制作現場の責任者であるのに対して、プロデューサーは番組全体の責任者としての役割があります。
プロデューサーの仕事は、番組の企画考案や全体的なスケジュールの決定、予算管理、出演交渉などさまざまです。タレントや出演者の候補選出はディレクターの仕事ですが、芸能事務所への出演交渉はプロデューサーが行います。
また、多くの場合、総合演出よりもプロデューサーの方が立場的に上になります。総合演出は現場での対応がメインですが、プロデューサーは現場よりもデスクワークになることが多いようです。
プロデューサーの仕事内容については、以下の記事でも詳しく解説しています。
テレビプロデューサーの仕事内容とは?ディレクターとの違いを解説
ディレクターとの違い
総合演出がイメージしたものを具体的に形にするのがディレクターの仕事です。番組の演出や、撮影の進行管理、編集などを行いながら、映像や番組などのクオリティを保つ役割があります。
限られた予算や時間で、クオリティの高い内容を映像化させることが求められます。ただし、番組によって役割が異なる場合もあり、こまかい仕事内容については境界が曖昧になっている部分もあるようです。
ディレクターの仕事内容については、以下の記事でも詳しく解説しています。
監督との違い
ドラマや映画で監督と呼ばれる立場の人は、テレビ番組では演出・ディレクターと呼ばれます。総合演出と監督の区別は曖昧で、どちらかしかない現場も存在します。
監督は演出や脚本、スタッフ、芸能人などすべての関係者を取りまとめながら、番組を作り上げます。仕事内容を一言で示すと「演出」です。
大人数のスタッフがいる大きな番組では、「総合演出」「監督」「総監督」などを配置することもありますが、役割はほとんど同じです。
総合演出の年収
一般的にはテレビ局員が総合演出を担っているため、局によって給料が異なります。とはいえ、職種に関わらずキー局の平均年収は高めの傾向があります。比較的年収が低くなりがちな地方局や番組制作会社でも、一般企業の年収と大差はありません。
ただし、テレビ局などから総合演出の依頼を受けるときの相場は、ゴールデン番組1回の担当で80〜100万円程度といわれています。依頼数が多ければ年収にも跳ね返るため、ひと握りですが年収が数千万円の人もいるようです。
総合演出に向いている人の3つの特徴
総合演出は現場の総責任者として、さまざまな仕事をこなさなければなりません。ここからは、総合演出に向いている人の特徴を3つご紹介します。
論理的思考力がある
総合演出は、論理的思考ができる人や計画性のある人に向いています。
番組が面白く仕上がっているかどうか、多くの人に興味をもってもらえそうかを論理的に分析して戦略を立てなければなりません。番組完成までの期限に制作スケジュールを進行していくことも重要です。
センスや発想力も大切ですが、それ以上に物事を論理的に考え、適切な判断を下す能力が必要になります。
リーダーシップがある
総合演出は、制作陣への指示出しなど、現場の責任者としてスタッフをまとめていかなければなりません。そのため、リーダーシップを発揮できる人の方が総合演出に向いているといえるでしょう。
番組の規模が大きくなれば、その分スタッフやタレントの人数も増えていきます。人数が多くなればなるほど統率がとりにくくなるため、周りからの信頼を得たり、カリスマ性を備えていたりなど、リーダーとしての資質が求められるのです。全員が団結して良い番組を制作できるかは、総合演出の力にかかっているといっても良いでしょう。
判断力・決断力がある
総合演出は、判断力や決断力も必要です。現場制作の責任者として、現場の状況を把握しながら臨機応変に判断や決断をしなければなりません。
特にロケは天候の影響を受けやすいので、撮影を続けるのか延期にするのか判断が必要となる機会が多くあります。番組の仕上がり具合に直結するため、冷静な対応が必要です。
新型コロナウイルスの感染拡大が問題視されていた2020年では、TBSとテレビ東京が2週間スタジオ収録の中断を決定しました。撮影の延期は出演者やタレントのスケジュール調整も必要ですし、視聴者からの批判がくることもあります。しかし、当時は英断との好意的な声も多く寄せられていました。
このように、総合演出は周囲の状況や番組の仕上がりを幅広い視点で考えながら、最善策を導き出す必要があるのです。
総合演出になるための方法
総合演出になるには、以下のようなルートがあります。
・プロデューサー、編成、作家などから依頼を受ける
・テレビ局に企画を持ち込んで採用される
基本的には、ADからディレクターに昇格して実力を認められれば、仕事の依頼を受けるかたちで総合演出の仕事ができます。
テレビ業界特有の事情により、下積みを経験しないでいきなり総合演出になることはできません。今のポジションで与えられた仕事を真面目に取り組み、信頼が得られるように意識していきましょう。地道に仕事の経験を積み重ねていくことが重要です。
日々仕事をこなしながら学ぶことで仕事が評価されるようになると、上司から声がかかり総合演出への道が開けます。
下積み時代が長くハードな仕事なので、忍耐力がありテレビが好きな方が適しているといえるでしょう。
ADの仕事内容や働き方については、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
総合演出は、演出面での総責任者として現場をまとめる役割を担います。番組の方向性決めやネタの決定、ディレクターへの指示出しなど、番組制作の一切に責任をもちます。
総合演出に向いている人の特徴は、論理的思考力があることやリーダーシップがあること、判断力・決断力があることです。幅広い視野で物事を考えなければならず、トラブルに対しては冷静かつ適切な判断が求められます。
総合演出になるには、現場で経験を積む方法が一般的です。下積みを経験していくことで、総合演出としての土台が作れます。忍耐力が必要な仕事ですが、テレビが好きで明確なキャリア目標があるなら、総合演出を目指してみてはいかがでしょうか。