皆さんが観ているテレビドラマのスタッフはどのような仕事をしているのでしょうか。
一言でテレビドラマスタッフといっても、様々な役割があり、エンドクレジットをみても何もわからないという人がほとんどだと思います。今回は、テレビドラマスタッフの中でも全体の管理を行う「制作部」に注目してみていきたいと思います。
制作部と演出部
制作部とよく比較される部署として「演出部」があります。演出部は監督と共にドラマの演出を担当する部署です。監督のもとで働く人は助監督と呼ばれます。助監督はジャンルごとに責任者がいる仕組みになっていて、演者全体を見る人、衣装やメイクを考える人、小道具を準備する人など、それぞれに役割が与えられています。
演出部に興味がある人は以下の記事で実際に働く人の声を見てみましょう。
テレビ業界で活躍中のスタッフにインタビュー!【ドラマスタッフ編】
そして、助監督をさらに裏から支える存在こそが「制作部」です。どういうことか、具体的にみていきましょう。
制作部の仕事は一言で言うと“ドラマ制作の管理”をする仕事になります。小道具や衣装、エキストラなどを扱う「演出」の仕事とは違い、「現場がうまく回るように準備をする仕事」ともいえます。監督がイメージとするロケ場所の選定や地図作成、使用許可取り、人員整理、スタッフの食事の準備をして、ドラマの撮影が滞りなく進行するように動きます。
撮影期間は毎日のようにロケがありますから、制作部の仕事は膨大になります。そのため、大まかにポジションが3つに分けられています。
【制作部 3つのポジション】
・制作担当
・制作主任
・制作進行
※制作部に入ったばかりの人はほとんどが制作進行を任されます。それから経験を積んで、制作主任、制作担当と役割が変わっていきます。制作担当になるとかなりのベテランになりますから、主任や進行の様子も確認して全体を仕切っていくことになります。
この3つの役職、言葉だけではかなりイメージしにくいと思います。次は各ポジションのお仕事をそれぞれ確認してみましょう。
制作部の役割分担とは
制作担当
制作担当は基本1人、大きなドラマでは2〜3人体制をとることもあります。3つのポジションのトップに当たるので、制作部全体の統括も役割に入ります。主に予算管理やロケハン、制作部全体の指揮を担当します。予算の管理は全ての部署に関係する話ですから、各部署との打ち合わせをたくさん行い、綿密に擦り合わせます。ロケハンでは実際にロケの候補場所に行って撮影に必要な準備を洗い出し、他の制作部とともにロケ準備を進めます。
制作主任
撮影の規模によりますが、大体2〜4人で担当します。ロケ地候補への交渉や書類申請などを進める役割になります。ロケは地方自治体や市役所、商業施設、一般道路など様々な場所で行います。色々な申請をするので事務処理能力が必要ですし、土日祝日は申請を受け付けてくれない、申請してから許可が出るまで1週間以上かかる…などの事態に対応する必要があるので、計画性も大切です。
ロケハンは制作担当が行くこともあれば、制作主任が行くこともあります。事前に交渉する立場なので、撮影現場に行くことは少ないのが制作主任の特徴です。また、ロケ地での細かい決まりを制作進行に伝えたり、交渉や申請の仕事が落ち着いている場合は制作進行とともに仕事をしたりすることもあります。
制作進行
制作部に配属された場合、最初に行うのが「制作進行」です。現場のお弁当や飲み物の手配、スケジュールやロケ地の地図を配布するなど、細かいことを一挙に担うため、実は細かい気配りと根気のいる仕事です。
撮影当日は誰よりも先に現場に行きます。撮影中には近隣に迷惑がかからないように演出部に指示することもあります。現場では役者がスタンバイできる場所を用意したり、車両の手配、お弁当や飲み物の準備、ゴミの始末などやることが山ほどあります。制作進行は最後の片付けが終わるまで現場にいるので、最初はかなり大変ですし、これが毎日続くので制作担当はかなり過酷な仕事です。また、撮影の日数が多いため、バラエティよりも予算を抑えた発注が求められたりと、配慮も必要です。
最初はできないことも多いですが、「最初に配属された時が一番大変だった」という人がかなり多いのが制作部。焦らず先輩から学びましょう。
制作部がいないと撮影が始まらない
予算管理に申請や現場の準備…制作部の仕事は膨大でかなりの処理能力・気配りが求められる仕事です。まさに「縁の下の力持ち」であり、どれだけ優秀な監督や役者が揃っていても制作部がいなければ撮影をすることはできません。大変なことも多いですが、お弁当の評判がよかったり、自分の見つけたロケ地が好評だったりすると嬉しいものだといいます。演出に直接関わらない制作部の仕事も見てくれている人がいると現場に入れば実感することでしょう。
制作部の仕事は社会人の基本
制作部は予算管理や外部とのやり取り、申請、スケジュール管理などかなり幅広くオフィスワークと共通するものがあります。会社で言えば営業部と経理部の仕事を一気にこなすようなものです。また、撮影現場を仕切ったり、片付けをしたりといった仕事もあるので、イベント運営などの仕事にも生かせることでしょう。
制作部の仕事がこなせる時点で社会人としてかなりの経験を積んでいるといえます。大変な仕事ですから、残念ながらすぐに業界を去ってしまう人がいるのも事実ですが、制作部で積んだ経験は他の業界に行ったとしても役立つことでしょう。
まとめ
そんな制作部は常に人手が足りないので、かなり門戸が広いのも特徴です。制作会社や派遣会社に就職する、フリーランスで働くなど方法は様々です。求人が出ていなくても人を求めていることが多いので、制作会社に電話をかけて未経験で挑戦できる可能性もあります。とにかくドラマの世界に入って働きたい!という人は(先方の迷惑にならない範囲で)直談判するのもありです!思い切って挑戦してみてはいかがでしょうか?