未経験でも目指せる!ドラマの脚本家になるには?

ドラマの脚本家の主な仕事と流れ たくさんの人に感動を与えるドラマや映画、アニメ、演劇などの作品づくりに欠かせないのが脚本家。物語のテーマを決め、登場人物のキャラクターを設定し、セリフや動きを加えてストーリーをつくり上げる...


この記事は約8分で読み終わります。

ドラマの脚本家の主な仕事と流れ

たくさんの人に感動を与えるドラマや映画、アニメ、演劇などの作品づくりに欠かせないのが脚本家。物語のテーマを決め、登場人物のキャラクターを設定し、セリフや動きを加えてストーリーをつくり上げる仕事です。ドラマや映画が好きな人の中には、脚本家に興味を抱く人もいるのではないでしょうか。しかし、ドラマの脚本家になるにはどうすればいいのか分からない人もいるでしょう。今回は、脚本家の仕事内容やなるための方法、求められるスキルや年収についてご紹介します。

脚本家とは?

脚本家は、映画やドラマなどに必要不可欠な脚本を書く仕事を担っています。脚本は、舞台装置や俳優のセリフ、ト書き(動作)などが細かく記されていて、スタッフが作品制作に必要な設計図的役割を担う本です。
脚本家の活躍の場は幅広く、映画やドラマ・演劇だけに収まりません。今やアニメやゲームの制作においても必要な存在なのです。映画監督やクリエイターは、脚本にもとづいて映像・舞台作品を制作していきます。つまり、「多くの人を魅了する作品になるかどうかは、脚本によって大きく左右される」といっても過言ではないでしょう。また、「シナリオライター」という呼称もありますが、両者は同じ職業と捉えても問題ありません。

脚本家の主な仕事

脚本を執筆するには、作品の企画やテーマを決めます。物語の大きな流れから、場面ごとの設定や描写など細部に至るまで細かく設定し、監督やプロデューサーなどの関係者と打ち合わせを重ね、作品の世界観やコンセプトにあった脚本を書きあげます。

作品の全体的な構想を練りながらも、リアリティを持たせるために多くの資料や情報を集める必要があります。必要であれば脚本家自らが取材も行います。詳細に調べ上げた上で、脚本の完成度を高めていきます。

また、映画やテレビドラマなどの映像作品の場合は、細かなカット割り、撮影の順番、使用する小道具、その他の撮影に必要な段取りなど、さらに詳しい情報を記載します。

脚本家の仕事の流れ

脚本家の仕事の流れも見ていきましょう。

・映画プロデューサー、番組プロデューサー、監督との打ち合わせ
脚本執筆の依頼主である映像作品のプロデューサーや撮影を担当する監督、舞台の主宰者などと企画書をもとに、どんな作品に仕上げていくのかを打ち合わせます。
企画内容に応じてキャスティングを考える他、完成までのスケジュールの決定、撮影スタッフの手配、編集までを含めた全体の概要を決めていきます。

・取材
作品によりリアリティを持たせるために、物語の舞台となる場所、作品テーマとなる分野、時代背景、取り上げる事柄が起こった理由、職業や業界などの取材を行うことがあります。
資料を集めたり、自ら写真を撮ったりしながら、脚本の執筆に必要な素材を集めていきます。取材力が問われると同時に、この取材の質が脚本の完成度を左右するでしょう。

・脚本の執筆
打ち合わせや取材して集めた資料をふまえて、いよいよ脚本を執筆していきます。
登場人物一人一人のキャラクターを深く考察し、その他の登場人物の相関関係などを考慮して、まずプロットと呼ばれるあらすじをつくっていきます。
セリフの言い回しや行動、演出などの細かな部分まで作り込み、脚本を仕上げます。

・提出と修正
書き上げた脚本はプロデューサーや監督に提出し、双方でさらに細部を詰めていきます。全体の尺や効果的なシーンの作り込みに関する意見や要望を受けて、修正が必要であれば脚本に手を加えていきます。脚本家自身では気づかなかったことや新たなアイデアのヒントを得る場合も多く、プロデューサーや監督と一緒に脚本をブラッシュアップすることで、作品のクオリティが高まっていきます。

脚本家になるには

脚本家になるためにはさまざまな方法があります。脚本家には特別な資格があるわけではなく、脚本家になるためのルートが決まっているわけでもありません。未経験でも目指せます。多くは、映画製作やアニメ、テレビなどの映像制作関連会社に勤務しながら実力を認めてもらって脚本家として活動をスタートさせますが、それ以外にも脚本家デビューする道はあります。

・脚本家コースのある学校で学ぶ
私立の専門学校の他、日本放送作家協会が次世代を担う作家を養成する目的で開講している日本脚本家連盟スクールなどの学校で学ぶ方法もあります。
同スクールは、第一線で活躍する脚本家や放送作家の指導の下、実践的な脚本執筆の理論を学べるなど、それぞれ特色あるカリキュラムが組まれています。

・公募やコンクールに応募する
脚本賞やコンクールに応募して実力を認められ、脚本家デビューした例は決して少なくありません。映画やテレビ業界の関係者の目に留まれば、チャンスは開かれます。

・映像業界で働く
脚本家としての採用でなくても、映像業界に就職して経験と実績を築いていくことで、自分の脚本を作品に採用してもらえるチャンスも開かれるでしょう。
先輩脚本家からの指導を受け、学ぶ点が多いのも魅力です。

・舞台関係の仕事に就く
映像作品だけでなく、舞台や演劇も脚本家が活躍できる分野です。裏方でもいいのでまずは舞台関係の仕事に就き、業界での人脈を広げて脚本家に転身することも可能です。

・自主制作活動
自主制作作品として自らの脚本で映像制作や演劇活動などを行って、実績を積む方法です。資金が少なくても工夫次第で魅力ある作品をつくり上げ、YouTubeやSNSで公開して注目を集めることができます。

独学で勉強し夢を叶えた脚本家もいる

2022年秋に放送され大きな話題を呼んだドラマ『silent』の脚本家・生方美久さんは、看護師の仕事をしながら独学で脚本の勉強を始め、その後「フジテレビヤングシナリオ大賞(ヤンシナ)」を受賞し、脚本家への道が開けました。仕事を辞めて2021年に上京し看護師に復帰しましたが、脚本を書く時間を確保するため非常勤のパートを選び、脚本家を目指したそうです。このように、仕事をしながら独学で勉強し、夢を叶えた人もいます。

脚本家に求められるスキル

脚本家になるには、どのようなスキルが求められるのでしょうか。必要なスキルを3つ挙げて紹介します。

・物語の構成力
脚本家になるには、物語を構成するスキルが求められます。ドラマ・演劇で人を引きつけるためには、物語をどう展開させるかが重要です。登場するキャラクター・設定にこだわっても、ストーリー展開に無理があったり単調すぎると、視聴者・観客に楽しんでもらえません。原作を基に作る場合でも、原作の世界観を残しつつ、ドラマ・映画向けの筋書きを新たに構築していく技術が求められます。見ている人が最後まで目を離せないような物語を作れば、脚本家として高く評価されるでしょう。

・発想力
観客を楽しませる物語を作るには、発想力も必要です。オリジナル作品を企画する場合は、登場人物のキャラクター設定や物語の背景などを、脚本家が考えなければなりません。どこかで見たような話ではなく、斬新な発想によるオリジナル作品が求められるケースもあります。ベースとなる原作があっても、元の作品にはないシーン・セリフを盛り込むよう求められる場合もあるでしょう。ただし、ただ斬新なアイデアを出せればよいというわけではなく、見ている人が共感できるかという点を見極める「バランス力」も必要です。

・探求心・情報収集力
脚本家には、人を楽しませようとする探求心も求められます。良質な作品を作るには、人々がどのような物語を面白いと感じるのか、どんな人物に共感するのかなどについて、日頃から研究しておくことが大切です。
自分たちの日常会話を意識するだけでも、自然なセリフの言い回し・会話の流れを考える上で役立ちます。また、時代に合った作品を作るためには、情報収集力も必要です。常にさまざまなことに興味を持ってアンテナを張り、得た知識・情報をインプットしておくとよいでしょう。

脚本家の年収

多くの脚本家は、特定の企業に属する会社員ではありません。フリーランスとして活動するのが一般的です。手掛ける作品によって報酬はさまざまで、支払い方も「1話あたりいくら」「プロジェクトごとでいくら」と決められることもあれば、放映時間に応じて決められているケースもあります。
脚本家の報酬例は、下記のとおりです。

<脚本家の報酬例>
・ラジオドラマの脚本:1本あたり約10万円
・テレビの深夜ドラマの脚本:1話あたり約15万~30万円
・テレビの連続ドラマの脚本:1話あたり約50万~100万円
・テレビアニメの脚本:1話あたり約20万~30万円
・映画の脚本:1作品あたり約100万~500万円

ただ、キャリアが浅い脚本家には、仕事が舞い込むチャンスは限られています。コンスタントに仕事を確保できないと、年収として数えると100万円に満たないことも…。それでも脚本家として名前が売れるようになれば、仕事単位の報酬が高く、また依頼件数も多くなるため、周囲があっと驚くような収入を得られるかもしれません。

まとめ

映画、ドラマ、アニメ、舞台、ゲームなど、さまざまなジャンルに活躍の場が広がっているのが脚本家です。単に脚本を書くだけでなく、舞台演出や映像演出、ゲームエフェクトまで含めた作品づくりに深く関わる脚本家も少なくありません。
マルチに能力を問われる場面も増えているため、多種多様な才能を発揮できる職業と言えます。また、日頃から自分の強みはどこにあるのか、どんな作品をつくりたいのかを考えることが、オリジナリティのある脚本づくりにつながっていくでしょう。