自主映画とは?映画製作の基本と魅力を解説!

映画業界全体に逆風が吹く中、自己資金のほか、補助金や支援制度、クラウドファンディングを使い、自主映画の製作を続ける団体が数多く存在します。最近では、第2の「カメラを止めるな!」とも言われる低予算の自主映画「侍タイムスリッ...


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映画業界全体に逆風が吹く中、自己資金のほか、補助金や支援制度、クラウドファンディングを使い、自主映画の製作を続ける団体が数多く存在します。最近では、第2の「カメラを止めるな!」とも言われる低予算の自主映画「侍タイムスリッパー」も大ヒットし、話題となりました。今回は、そんな自主映画について詳しく解説していきます。

自主映画って何?

自主映画とは、自主製作映画、インディーズ・ムービー、インディペンデント映画、同人映画などとも呼ばれ一概に定義するのは難しいですが、日本では大手配給会社のメジャー作品以外の作品を指します。では、メジャー映画と自主映画はどのように違うのか具体的にご説明します。

メジャー映画と自主映画の違い

商業映画と呼ばれるメジャー作品は、予算が潤沢なので大掛かりな撮影が可能になる反面、収益性がかなり重視されます。日本における商業映画1本の平均制作費は約3.5億円と言われていますが、VFXやCGを駆使した大作となると、10億、20億の予算が必要になることも少なくありません。
逆にインディーズの場合、自分の好きなことを追求できます。儲からなくても、自分が作りたいと思うものが作りやすい。そのため、視聴者が意味を理解しづらい内容のものや、商業作品では行えない様な映像実験的要素や社会風刺などを含んだ作品も多い印象です。さらに、作者による自己満足的な内容のものも別段珍しいものではありません。しかし、それゆえの楽しさが生み出されることもあり、熱狂的な支持を得ている作品や伝説的な存在になっている作品なども少なからず存在します。

自主映画の作り方

自主映画を制作するにあたって、まずは、映画製作の手順を把握しておく必要があります。ここからは、映画製作の手順を紹介していきます。

映画製作の手順

映画は企画、シナリオ・絵コンテ、準備(プリプロダクション)、撮影(シューティング)、編集(ポストプロダクション)、上映の順で作られます。

・企画(ディベロップメント)
映画製作の第一歩は企画/構成を考えるところからです。映画のテーマ、アイディア、タイトル、ストーリー、キャスティング、予算の調達、撮影スケジュール、上映方法など、映画を製作しヒットさせるまでの道のりを企画します。これらは基本的にプロデューサーに一任される役割ですが、制作現場においては監督が最高リーダーであるため、ある程度監督にも権限が任せられています。

・シナリオ・絵コンテ
映画のテーマやコンセプトが固まったら、シナリオ作成に移ります。内容が面白いのはもちろんのこと、一つのシーンを長回しし続けると、観てる側が飽きてしまうため、テンポの良い場面展開を念頭にシナリオ作成に打ち込むのも一つの手です。また、シナリオが完成したら、それを実際に映像化するための絵コンテを作成します。邦画の長編映画の場合、だいたい600〜700ほどのカット数があるため、その分の絵コンテが必要となってきます。

・準備(プリプロダクション)
映画はたくさんのスタッフの協力のもと作られています。予算やスケジュールを管轄するプロデューサー現場のトップである監督などの制作チームに加え、衣装・大道具・小道具・メイクなどの美術チームカメラ・照明・音声・編集などの技術チームが集って製作されます。それぞれのスタッフが話し合い、打ち合わせやロケハンなど十分な準備を行う必要があります。その間、キャストは顔合わせや本読みを行い、スタッフ同様、撮影に向けた準備を同時進行で行います。

・撮影(シューティング)
全スタッフ・キャストが集結し、いよいよ撮影です。一般的な邦画の場合、100分ものでだいたい600〜700カットあると言われており、ハリウッド映画ともなれば3,000以上のカット数があります。自主映画の場合だと比較的スケジュールに余裕がありますが、人気タレントを起用した商業映画だと、詰め詰めのスケジュールの中撮影が行われることがほとんどだそうです。

・編集(ポストプロダクション)
撮影が全て完了したら、あとはそれを作品として完成させるための編集作業です。主に撮影現場で撮った出演者の声とBGM/効果音を重ねる音響効果膨大な量のカットを一つにつなぎ合わせていく視覚効果の2種類の編集が行われます。

・上映
最後に、編集を終え完成した映画の上映です。ミニシアター・名画座などで披露したり、配給会社を通じて全国映画館で公開したりします。また、劇場での上映に加え、映画祭やコンペへの出品も行います。

映画製作に必要なスタッフ

自主映画では、多くの業務を兼任する監督も少なくありませんが、どのような役割が必要なのでしょうか。ここでは各セクションの紹介をしていきます。

・プロデューサー
制作のトップ
・監督(ディレクター)
演出のトップ
・助監督
ファースト、セカンド、サード
・脚本家
ストーリーを考える人
・カメラマン
撮影担当
・照明
撮影時の照明担当
・録音
現場での同時録音、効果音、BGM等の調整担当
・俳優
役者さん。演技をする人
・ヘアメイク
出演者のヘアメイクを担当
・美術
大道具、小道具の設置および撤収

上記以外にも多くのスタッフが携わることがあります。

映画製作にかかる費用

自主映画でどのような費用がかかるかも気になりますよね。ここでは、映画を製作する際にかかる費用についてご説明します。

・機材費
撮影を行うために必要なカメラや音響、照明などの機材にかかる費用です。ツテがなく一から始める場合、全てを準備しなければならないため、その分機材をレンタルする費用も多くなってきますが、日本映画大学や日本大学芸術学部など、本格的な映画製作に取り組んでいる学生が映画を作る場合、大学側や自治組織などによって機材の貸し出しが無料で行われることもあるようです。

・ロケ費
屋外スペースや屋内スタジオなど、撮影を行う場所にかけられる費用も必要です。道路での撮影を行う場合、所轄の警察署に道路使用許可申請・道路使用料金の支払いが必要となります。また、スタジオや施設なども同様に、使用許可願いを提出しなければ貸してくれないため、申請の承認などを考慮して余裕を持ったスケジュールを立てましょう。

・衣装費
自主映画の場合だと、役者の私物を使用するケースが多いですが、一般的な映画であれば、衣装・デザイン担当がつき、題材によっては数百万円単位のお金がかけられることもあります。

・美術費
大道具、小道具、メイク、電飾、フリップなどの撮影中に使われるものと、CGや模式図など編集中に挿し込まれるものの2種類があります。

・人件費
映画に出演するキャスト、映画を作るスタッフ、協力してくれる地域の方々など、とにかく映画を製作する際にかかる人件費は膨大なものです。また、撮影現場での食費や、現場までの交通費、遠方での撮影であれば宿泊費なども加算されてきます。メインキャストだけでなく、たとえばエキストラを100人出演させるといった場合、100人分の出演料・食費・交通費が加わってくるため、はなから低予算での製作となればあまり人件費をかけられません。

・保険費
映画撮影に関係するフィルム保険費や、撮影中の事故などを考慮した傷害保険などです。

・納品費
最後に、映画を納品する際に必要となる納品費がかけられます。パッケージ化されたDCP(デジタルシネマパッケージ)を、HDD(ハードディスクドライブ)などに格納化して、劇場に納品する作業です。映画館上映ではなく、WEB動画で配信する場合は”コーディング費”が発生し、動画を手元に残すのであれば、DVDなどの”メディア費”がかかります。
さらに、テレビCMのような大規模なものになると、”プリント費”と呼ばれるコストが発生し、また、完成した動画をアーカイブとして残す場合には、”管理費”が別途で必要となります。

予算の調達手段

では、そうした製作過程を経て作られる映画に必要な予算は、どのような手段を持って調達されるのでしょうか。

・自己資金
自主製作映画と言うだけあって、制作予算を自己資金に頼るといった方も多いようです。特にツテがない状態で自主映画を作っている人であれば、100%自己資金で制作しなければならないため、映画作り以外の時間は全てアルバイトに当てているという方もいます。

・助成金、補助金
文化庁による文化芸術振興費補助金および日本芸術文化振興会など、映画製作に対する支援制度があらゆる場所で行われています。劇映画・記録映画及びアニメーション映画等の日本映画への支援、そして、映画による国際文化交流を目指した国際共同製作映画への支援など様々な支援が行われているので事前にチェックしておくことをおすすめします。

・スポンサーシップ
プライベートフィルムではなく、劇場を抑えて上映する場合、セールスポイントとして活用すればスポンサーをつけることも難しくはありません。エンドロールの協力企業に名前を出すことはもちろん、作中にスポンサーとなる企業/お店を登場させるシーンを入れるなど、何かしらの諸条件は必要となってきますが、映画の評価・スポンサーの認知度がともにアップする相乗効果も期待できます。

・クラウドファンディング
近年、クラウドファンディングを活用した映画製作事例は増えています。学生の自主制作映画のみならず、有名俳優を起用した商業映画でも活用されているようです。国内で人気の高いクラウドファンディングサイトである「MotionGallery」、「CAMPFIRE」、「Makuake」などでも映画にまつわるプロジェクトは多く実施されています。

まとめ

今回は、自主映画について、映画製作の流れをベースにご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。日本の商業映画の平均制作費は5,000万円だそうです。かつてより日本映画はお金がないと言われていますが、「カメラを止めるな!」「侍タイムスリッパー」のような低予算映画でも大ヒットしたり、クラウドファンディングのようなサービスが活用されるようになった今、自主映画が偉大なエンタメとして花を咲かせる日も近いかもしれません。