収録現場でよく使われる業界用語14選
テレビの収録やナレーション、映画の日本語吹き替えなどでよく使われる業界用語14選を使用例とともにご紹介します。
アテレコ
アテレコとは、事前に制作された外国のドラマや映画、テレビ番組のセリフを日本語に吹き替えることを指します。これは「声を当てるレコーディング」という言葉が由来です。
後から声を当てるという意味では、アフレコ「アフターレコーディング(after recording)」に近いといえるでしょう。
ちなみに、セリフや音楽を先行して収録する「プレスコ(プレスコアリング)」は、テレビではほとんど行われません。
・使用例:今日はアテレコの収録だ。
ワンチェーン
ワンチェーンとは、カメラマン、音声、照明からなる撮影チームのことです。テレビ番組の素材を収集する取材形式のことを「ENG(Electronic News Gathering)」といいます。
ENGでは一般的にカメラマン、音声、照明などでチームを組みます。このENG1班のことをワンチェーンと呼ぶのです。
・使用例:ワンチェーンが現場に向かい、ニュースの取材やインタビューを行います。
完パケ
完パケは「完全パッケージ」という言葉の略称で、番組や映像作品が完成し、編集や制作に関わるすべての作業が終了した状態を指します。つまり、放送や配信が可能な状態のことです。テロップが一切入っていないものは「白完」といいます。
・使用例:今日はこの番組の完パケ作業を行います。最終チェックを行い、問題がなければ放送に向けて準備を進めます。
撮って出し
撮って出しとは、収録した映像素材をその場で完成形として放送や配信に使用することを指します。つまり、収録した映像素材を編集作業なしでそのまま放送する手法です。撮って出しには、編集作業が入らないため、カメラマンの高い技量が問われます。
速報性がない限り、撮って出しが行われるケースはほとんどありません。
・使用例:このコーナーは事前収録ではなく、撮って出しで行います。素材をそのまま使用し、リアルな現場の様子を伝えます。
また、ロケ~収録までや、収録~OAまでの時間がほとんどないときにも撮って出しという言葉を使うこともあります。
・使用例:この回は撮って出しだから収録からOAまで1週間もない!
行って来い
行って来いとは「往復」を意味する言葉です。取材や撮影などの現地作業を行うスタッフが、現場からスタジオや編集室に戻ることを指します。そのほか、同じ作業を繰り返すこと、テープの合成、書き戻しなどにも使用されます。
・使用例:ここからスタジオまでテープを持って行って来いしてきて!
テレコ
テレコは「互い違いにする」「入れ替える」といった意味があります。元々は歌舞伎界で使われていた言葉で、異なる話をひとつにまとめて交互に展開することを指していました。
・使用例:台本がテレコになっているから次から気をつけてください。
インサート
インサートは直訳すると「挿入」「組み込む」といった言葉です。テレビ業界では映像の間に別の映像を入れることを指します。例えば、グルメ番組のシーンで料理のみの映像に切り替える、お店の外観に切り替えるなどがあります。
・使用例:このシーンの前に食べ物のインサートを挟んでください。
フッテージ
フッテージとは映像や動画の素材のことです。具体的には、収録された映像素材や映画のカットなど、編集や制作に使用される映像の断片やシーンを指します。「ドッキリ映像100連発」のような番組は「フッテージもの」と呼ばれます。
・使用例:この番組では、さまざまなフッテージを使用してストーリーを構築します。
頭出し
VTRや長編映像をすぐに再生できるように準備することです。具体的には使用する映像の先頭(アタマ)部分でセットする、あるいはテロップや静止画の最初の1枚をセットしておくことを意味します。
・使用例:スタートに間に合うように頭出ししておいてください。
シンク
シンクは番組が始まるタイムコードを指す言葉です。映像と音声の一貫性や正確なタイミングを確保するために使用されます。
・使用例:シンク入れしておいてください。
バリ
会議室や楽屋の場所を明確にするため、番組名や日時、会議名、部屋の名称を記載した張り紙のことです。案内バリともいいます。
・使用例:バリを用意しておいてください。
わらう
わらうは、「物をどかす」「取り除く」といった意味があります。主に収録のときに使われる用語です。元々は舞台で使われていた言葉で、「払う」「取り払う」から次第に「わらう」へ派生したといわれています。
・使用例:あの荷物をわらってください。
なめる
人物を何かの物越しから撮影することを「なめる」といいます。また、足元から顔に向かって撮影していくことを指す場合もあります。
・使用例:芸人さんの肩をなめてください。
ばれる
ばれるとは、画面の中にスタッフや一般の方など、映るのが好ましくない人やモノが映り込むことです。見切れると同じ意味があります。編集の技術が発展しているため、ばれてしまっても後から修正できる場合もあります。
・使用例:マネージャーが、ばれているから撮影し直してください。
テレビ業界でよく使われる用語8選
続いて、テレビ業界の会話でよく使われる用語8選と使用例をご紹介します。
あいのり
あいのりとは、複数のスポンサーがひとつの番組を共同で提供することを指します。また、決まっているスケジュールに新たに予定が入ることを指すケースもあります。
・使用例:あいのりじゃないと制作費が足りない。
がや
がやとは、エキストラのことです。すなわちメインのタレント以外を指し、バラエティ番組ではひな壇の芸人を指すケースもあります。「がやがやした音」からきているそうです。
・使用例:このシーンでは、がやを用意してください。
香盤表
香盤表はスケジュール表の一種で、撮影の順序や出演者の入り時間、必要な道具、撮影場所などが書かれています。撮影をスムーズに進行するために欠かせない資料で、スタッフは香盤表を細部まで確認することが大切です。
・使用例:香盤表をよく読んでおいてください。
パイロット版
「パイロット版」とは、試作版のVTRを指します。また、深夜や早朝などの時間帯を利用して実験的に放送する番組を指す場合もあります。
番組のコンセプトや内容をテストし、制作会社や放送局が視聴者の反応や評価を見て継続的なシリーズ化を判断するために制作されることもあるそうです。
・使用例:7月にパイロット版を放送する予定だ。
内トラ
内トラとは「内部のエキストラ」のことです。一般的には撮影スタッフやディレクターなどがエキストラとして出演することをいいます。すなわち、映画やドラマなどで通行人として登場している人物の一部は、制作スタッフの可能性があります。
・使用例:このシーンは内トラでお願いします。
ばらす
一般的に「ばらす」とは、秘密や情報を公にすることを指しますが、テレビ業界では収録後の機材やセットなどを片付けることを指す言葉です。また、元々入っていた予定がキャンセルになったことを「ばらす」と呼ぶ場合もあります。
・使用例:18時までにばらしておいてください。
・使用例:来週の撮影はばらしになりました。
マスター
マスターとは「マスターコントロールルーム(master control room)」の略で、主調整室のことです。主調整室とは、テレビ放送局や制作会社などで使用される、番組の切り替えや送り出しなどを行うための専用の部屋やスタジオのことを指します。
また、サブ「サブコントロールルーム(sub control room)」と呼ばれる映像や音声を調整するための操作室もあります。
・使用例:マスターでチェックしてください。
まとめ
テレビ業界で使われる用語は複数あります。業界用語を知らないまま収録に臨むと、現場でディレクターやプロデューサーが何を言っているのか分からなかったり、重大なミスが発生したりするため注意しましょう。
また、この記事で紹介した言葉以外にも業界用語は複数あります。気になる方は調べてみてください。