一般的にテレビ業界の仕事といえば、バラエティ番組の制作やドラマ制作をイメージする方が多いかと思います。
しかし、テレビ業界にはスポーツ中継やスポーツ関連の番組を担当しているスタッフもいます。
今回は『スポーツ関連番組』の仕事内容をご紹介したいと思います。
スポーツ番組とは
そもそもスポーツ番組にはどのようなものがあるでしょうか。
スポーツ番組とはその名の通りスポーツに関連した内容を放送する番組のことです。
基本的にスポーツ番組は大きく分けて中継、ニュース、バラエティ、ドキュメンタリー、などのジャンルに分けることができます。
ここからはそれぞれの特徴と主な番組を説明していきたいと思います。
スポーツ中継
オリンピック、箱根駅伝、プロ野球などスポーツの大会や試合を生放送、録画放送などで解説者の解説やアナウンサーの実況とともに放送します。
【主な番組】
オリンピック、箱根駅伝、アジア大会、プロ野球、世界水泳選手権大会、世界陸上競技選手権大会、マスターズ、FIFAワールドカップ など
スポーツ中継はスポーツ番組において一番バラエティ番組との違いが大きいと思います。
スポーツ中継は生放送で試合の様子を放送するだけで簡単だと思われがちですが、
中継でも事前に準備することや編集作業などがたくさんあります。
たくさんある作業の中でもスポーツ中継ならではと言える作業をいくつかご紹介します。
【資料作成】
バラエティなどの番組制作でも資料を作ったりすることもあると思いますが、スポーツ中継でオリンピックなどの大きな大会が行われる時は各競技の選手資料というものを作ります。
これは選手の自己ベストやメダル獲得数、年齢や身長などのプロフィールが一目でわかるような資料です。
スポーツ中継は生放送で時間がないので、事前にある程度の情報を調べて資料にまとめておくことで、その資料を見れば調べなくてもある程度の情報がわかり、実況やVTR作りでの情報確認に活かせます。
この資料は日本人選手だけでなく、海外の選手の分も作るので、マイナー競技やあまり知られていない選手の分を作る時には、海外のサイトを使ったり、英語で検索をかけたりすることもあります。
とても大事な情報なのでチームが出している公式プロフィールなどソースが明確で信用できるところから情報を集めます。
【VTR作成】
皆さんはスポーツ中継の途中で出場している選手やチームの紹介VTRを見たことはないでしょうか?
このVTRは選手がどのような思いで試合や大会に挑んでいるのか伝えたりその大会の盛り上がりが、より伝わるように差し込まれています。
例えば、この試合に勝てばオリンピック出場が決まるという時には、選手のインタビュー、練習の様子などとともに「ここで勝利すればオリンピック出場!」などと煽りが入ったVTRを差し込むことで試合への想いの強さやその試合の重要さを伝えることができ、視聴者もより熱くなってスポーツを観戦することができます。
また、アバンと呼ばれる大会放送前に流すオープニング映像を作成することもあります。
このようなVTRは大きな大会などの前に選手の練習風景やインタビュー撮影のロケに行き、編集作業をして、当日の生中継で流せるように事前に作成しています。
インタビューや練習風景などのロケは大会や試合前などナーバスになりやすい時期に引き受けていただけることもあるので、ロケは手短に済ませるなど選手に対する配慮がとても大切です。
編集の流れはバラエティなどと変わりませんが、VTRの尺が短いため、編集箱に入る時間はバラエティよりは短いので、その点は良い点と言えるかもしれません。
【荷物準備】
スポーツ中継では海外の大会などを中継することも多いため、その都度、現場で必要な荷物を準備します。
大会によってですが、2週間以上毎日中継がある場合もあるため、カンペやペン、ガムテープなど筆記用具だけでもかなりの量が必要になります。
現場に行ってからペンが出なかったやカンペが足りないという事態にならないよう、前大会の情報などを元にどれをどのくらい持っていくか考え、準備します。
また、これはデスクさんが用意してくれることがほとんどですが、カップラーメンなどの軽食やケトルなども準備して持っていくことがあります。
大会前になると備品が入った大きなキャリーケースがスポーツ局の廊下に並んでいることもよくあります。
【テロップの仕込み】
編集して完パケになったものを放送するバラエティなどでは編集箱でテロップを入れる作業をしますが、生放送の番組ではその場でテロップを入れてそのまま放送されるため、事前に予想できるテロップは仕込んでおきます。
例えば、「日本VSブラジル」などのように対戦相手が決まっていたりする場合は決定事項なので、デザインなどを考え、事前に仕込んでおくことができます。
また、「日本先制点獲得!」など実際にそうなるかわからないが予想して作っておけるものも事前に作っておいて、生放送などで使うテロップのシステムの中に保存しておきます。
中継本番になったら事前に仕込んでおいたテロップを使ったり、生放送対応でその場にテロッパーさんもいるので新たに作って欲しい物などはデザインや文言を作ってその場で作ってもらい、差し込んだりします。
生放送にテロップを載せるとそのまま放送されてしまうので、ここでも情報の正確さが重要です。
「初出場」や「年齢、名前の表記」など間違えないように念入りに確認しましょう。
大きい大会だと同時進行で別の競技が行われていることもあるため、放送していない競技の情報収集も重要で、結果が出た時に実況やテロップで情報を入れ込むこともあります。
【ホテル生活】
スポーツ中継では海外などの現地に行くスタッフはもちろん、東京の局内で放送に対応するスタッフもホテル生活になることがよくあります。
理由としては、連日の生放送でほぼ寝る時間が取れなかったり、海外の大会では時差があって昼夜逆転の生活になるなんてことも珍しくないからです。
電車のない時間に帰宅するために全スタッフがそれぞれタクシーで帰宅するより、局の近くのホテルを取って寝泊まりした方が予算的にも安く済みますし、移動の時間が短縮できるので、休息の時間も長く取れます。
なので現地に行かないスタッフも大会が始まると大きなキャリーケースを持って出社するなんてこともあります。
また、大会や試合だけでなく、選手の練習ロケなどでも地方に行くこともあるため、ディレクターは全国各地、時には海外にも飛び回って取材をしています。
スポーツニュース
【主な番組】
フジテレビ『すぽると!』
TBSテレビ『S☆1』
NHK『サンデースポーツ』
日テレ『Going! Sports&News』 など
その日のスポーツの話題や試合結果などをハイライトのような形で放送しています。
出演者が現地取材に行ったり、番組独自の目線で解説したりするコーナーを設けている番組もあります。
局にもよると思いますが、スポーツニュースのスタッフも現地へ取材に行ったり、生中継を担当するなどスポーツ中継の仕事をすることも多いです。
また、スポーツ中継とスポーツニュースを担当しているスタッフの中には競技担当と呼ばれる人がいて、そのスポーツの協会や選手などにインタビューなどのアポをとりたい時に窓口となってやりとりをしてくれることが多いです。
スポーツバラエティ番組
【主な番組】
TBSテレビ『SASUKE』
テレビ朝日『夢対決2024 とんねるずのスポーツ王は俺だ!!』
フジテレビ『ジャンクSPORTS』
日本テレビ『くりぃむしちゅーの! THE☆レジェンド』 など
スポーツバラエティ番組は基本的にはバラエティ番組と同じ流れで作ります。
実際に体を動かして競技などをする番組では、本番と同様にスタッフがシミュレーションして安全性やゲームとしての面白さなどを確認します。
スポーツドキュメンタリー番組
【主な番組】
NHK『スポーツ×ヒューマン』
テレビ朝日『GET SPORTS』
TBSテレビ『バース・デイ』
こちらも基本的に番組の作り方の流れとしてはバラエティ番組などと同じです。
長期間の密着ロケを行うこともあるので、選手との信頼関係が深まったり、仲良くなれることもあります。
しかし、こちらも大会前などに取材を受けていただくことがあるので、選手に対する配慮が大切です。
また、プロの選手だけでなく、アマチュアやキッズに焦点を当てることもあるので、その選手がのちに活躍したりすると貴重な取材映像になることもあります。
大谷翔平選手の学生時代の映像を目にしたことがあるかと思いますが、このように未来のスターを取材できるのもスポーツならではなのではないでしょうか。
まとめ
今回は「スポーツ番組」についてご紹介しましたがいかがだったでしょうか?
生中継に関しては試合の結果はスタッフもどうなるかわからない状態で放送しているので接戦だったり、奇跡的な展開が起きたりすると視聴者と同じ目線でスタッフも盛りあがっています。この一体感はスポーツ中継ならではの魅力だと思います。
また、自分がずっとやってきたスポーツ、見てきたスポーツの中継を担当して憧れの選手に会うことができたり、一緒に練習してきた仲間が大きい大会に出場していて取材することができたり、他の番組とは違う角度のやりがいを感じることができるのもスポーツの魅力だと思います。テレビ業界に興味があってスポーツ好きの方がこれを見て少しでも興味を持ってくれたら嬉しいです。