【テレビ業界事典】バラエティ番組ADの仕事内容と楽しい業務特集

バラエティ番組のAD(アシスタントディレクター)ってどんなお仕事をしているの? 映像制作を志望する人の中には、「将来バラエティ番組の制作に携わってみたい!」という方もいるのではないでしょうか。なので、今回はバラエティ番組...


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バラエティ番組のAD(アシスタントディレクター)ってどんなお仕事をしているの?

映像制作を志望する人の中には、「将来バラエティ番組の制作に携わってみたい!」という方もいるのではないでしょうか。なので、今回はバラエティ番組を担当するADさんの仕事内容をまとめてみました。さらに、その中でも特に特に楽しくやりがいのある業務をピックアップします。
これを読んで「どんな働き方をしているんだろう?」「どんなやりがいがあるの?」といった疑問を、ぜひ解決してください!

テレビADの大まかな仕事の流れ~バラエティ編~

①会議

基本的に番組制作スタッフが全員参加する『定例会議』では、番組全体の方針に関しての協議や進捗情報共有、全体に伝えなければならない告知をここで行います。

さらに、企画や番組構成を考えるような『分科会』以外にも『台本打ち合わせ』や『美術打ち合わせ』、『技術打ち合わせ』などが存在します。番組ADはどの会議にも参加するケースが多いです。

ディレクターのアシスタントとして番組制作が順調に進んでいるか進捗を確認する意味でも、会議の参加はADの大切な業務のひとつです。

 

②リサーチ

番組制作における『リサーチ』とは、下調べのことです。企画会議で話し合われるネタ候補のリサーチや、企画会議で決まったネタの制作に必要な情報をリサーチします。これは1年目のADから歴の長いADまでおこなう重要な仕事です。

企画会議前には、ディレクターから事前に指示されている「ネタになりそうな特定のトピックのリサーチ」や「ロケの候補地」「ゲストのプロフィール」など、多岐にわたるリサーチをおこないます。
企画内容決定後は会議を進める中で新しく発生したリサーチや、番組制作をするうえでスタッフが知っておくべき内容の勉強のためにADが追加リサーチをします。しかし、中には調べにくい海外のネタや専門的すぎて時間がかかるようなリサーチもあり、そのようなものはリサーチ専門の会社に外注することもあります。

リサーチの方法は主にネットや書籍、新聞、テレビ局のアーカイブセンター(映像のライブラリー)を活用するほか、有識者への直接取材が挙げられます。

 

③ロケハン

『ロケハン』とは『ロケーションハンティング』の略称で、ロケ地を下見する作業のことです。主にディレクターとADで行くことが多いですが、ディレクターが多忙だったり近場のロケ地だったりする場合は、歴の長いADと他数名のADで行くこともあります。

ロケハンを行う目的は、ロケ当日に予期せぬトラブルが発生しないよう事前チェックすることです。
そのため、例えば芸能人が『街ぶらロケ』をするのであれば、以下のようなところを確認します。
・ロケをおこなう時間帯の交通量や、どんな通行人が多いか
・オープニングが撮影できそうな場所探し
・マイクにのりそうな環境音のチェック
・ロケ隊が撮影をおこなうのに十分な道幅があるか(通行人の歩行を妨げないでロケが出来そうか)
・ロケ地周辺にロケバスが入る駐車場や、メイクをおこなえるホテルはあるか
・出演者が落ち着いて休憩ができる場所はあるか
・(番組で取り上げる可能性がある)名物の食品を実際に購入して、提供時間や味をチェックする
など

また、バンジージャンプなどのアクティビティを伴う企画の場合は、出演者にアクティビティをおこなわせても大丈夫かどうか、ADが実際にシミュレーションをおこないます。
もちろん強制ではなく志願制なので、このようなことに興味がある方にはたまらない業務です。
このロケハンを通して、ロケの具体的な流れをイメージできるようになったらADとして一人前です!

 

④仕込み

『仕込み』とは、番組のロケや収録前の準備のことで、ADが一手に引き受けます。業務内容は主に以下のようなものを指します。

【ロケ・スタジオ共通】
・技術(追加機材なども含む)の発注 ・スケジュール作成 ・撮影内容に合わせた備品の準備
・カンペの作成 ・台本、資料等の印刷 ・スタッフや出演者のロケ弁当手配
・衣装や小道具の手配 ・機材、備品などの手配 ・収録メディアの管理 ・全体への情報共有

【ロケ】
・警察署への道路使用申請 ・ロケ取材交渉 ・ロケ先の担当者との打ち合わせ ・宿泊先や移動手段の手配

【スタジオ】
・スタジオ観客の手配 ・スタジオや楽屋への案内(バリ)作成・張り出し
・スタジオ内で使用する備品の運搬 ・前説(番組によって異なる) ・楽屋準備
・スタジオで火を使ったり、スタジオ外待機室でタバコを吸ったりする場合は、管轄の消防署に申請を出す
・番組内で出演者に食事を提供する場合は『フードコーディネーター(フーディー)』とよばれる料理担当者を手配する

仕込みは時間がかかるため、番組をスケジュール通りに制作するうえで気を遣わなければならない業務のひとつです。
さらにディレクターが考えた企画のイメージに合った仕込みができているか、ADは各所への報連相を欠かしません。いかに迅速かつ確実に仕込みをおこなえるかがADとしての腕の見せ所です。

 

⑤ロケ

ロケは、日帰りの街頭インタビューから宿泊を伴う大型ロケまで内容はさまざまです。ADはロケの内容に応じて、撮影が滞りなく進むようにディレクターをサポートします。

例えば、以下のような業務があります。
・撮影中の通行人整理 ・荷物持ち ・技術(カメラマンなど)の補佐
・ロケ先が複数ある場合、次のロケ先に押し巻き(予定より時間がかかっている=押し、予定より進行が速い場合=巻き)のご連絡を入れてスケジュールを調整する
・街頭インタビューに登場してもらう人に、番組出演承諾書への記入をお願いする
・カメラを回す(街頭インタビューではADが撮影することがある) ・インサート撮影(後日行う場合が多い)

ロケには制作スタッフや出演者、技術スタッフなど多くの方が関わるため、スケジュール管理が非常に重要です。スケジュール通りにいかないこともあるため、そのたびに臨機応変な対応が必要となります。

 

⑥(ロケVTR)編集

スタジオ内でロケのVTRを流す場合は、ここで1回VTRの映像編集が入ります。ADはここで編集補助として携わります。

映像の編集作業には『オフライン編集』と『EED編集』があります。
■オフライン編集
ディレクターがPCを使用して、収録した素材を編集する作業を指します。作業そのものはディレクターが中心となって行います。ADはディレクターがすぐに編集作業に取りかかれるように、収録素材をハードディスクに取り込んだり編集で必要になる画像や映像素材を用意しておきます。

■EED編集
オフライン編集した映像データをもとに、テロップやCGなどの追加素材を入れて放送用テープを完成させる作業を指します。主に外部の編集所で行われており、ディレクターが編集所のエディターに指示を出して編集作業を進めます。ADは出演者やお店の名前などに間違いがないか、編集モニターを見ながらチェックします。また、「自分ならどう編集するか」といった観点でディレクターがエディターに出す指示を見て、編集のノウハウを実践で学びます。

EED編集が終わると、BGMや効果音、ナレーションを入れる『MA』という作業を行います。ナレーターにナレーション原稿や水を用意するのもADの仕事です。その後、それぞれ完成した画と音を一つにまとめて、ようやくVTRが完成します。

 

⑦スタジオ収録

スタジオ収録は大勢のタレントがスケジュールを合わせて集まるため、基本は1回きりの勝負です。ADは収録が円滑に進むようにディレクターの指示に従いながらサポートを行います。カメラリハーサルで出演者の代わりに各ポジションへ立ってカメラマンが位置やピントを確認したり、収録中の小物出しやカンペの交換、トラブル対応などが主な業務です。
ADは忙しく動き回ることもありますが、拍手や笑い声で収録を盛り上げるのも業務のひとつなので、収録中はカメラの後ろで収録を見守ります。この時間を楽しんでいるADも多く、番組制作の中でも特に業界らしい業務の一つです。特等席で番組収録を体感しましょう!

 

⑧編集

ロケVTRの編集と同じように、画と音の編集を行います。作業内容は ≪⑥(ロケVTR)編集≫ に明記されているものと同じなので、そちらをご参照ください。

 

⑨納品・オンエアチェック

完成した放送用の映像データが入ったXD CAM(エックスディーカム)を、テレビ局に納品するのもADの仕事です。テレビ局の専用窓口に納品するだけではなく、字幕を作成する部署や番組の宣伝・編成を行う部署などにも完成した映像データを納品します。

また放送日やその翌日には、リアルタイムまたは録画でオンエアチェックを行います。
また、OAの録画データはロケでお世話になった方々へ、お礼と共にお送りするのもADの業務の一つです。ここでOA後の反響を伝えられることが多く、自分の仕事が世の中に対してどのような影響を与えたかを実感できる瞬間です。

 

こんなAD業務の中で、楽しい&やりがいのある業務とは

テレビの楽しい仕事①ロケハン

本番のロケとは違いディレクターまたはADのみで行くロケハンは、時間的にも精神的にも余裕をもって行うことができるので、特に旅行が好きな方は楽しめる業務だと思います!

ロケハンにも様々なケースがあり、例えば『事前に決めていたロケスケジュール通りに動けそうか』の確認をするロケハンもあれば、『実際に様々なアクティビティをスタッフらで体験したうえで、出演者にやってもらうものを決める』ような試験的なロケハンもあります。特に後者は、バンジージャンプなどのアクティビティをADらが実際に体験し、出演者に行わせても大丈夫なのかチェックをします。

安全なロケを行うには欠かせないシミュレーションなので、基本的にロケハンで発生したアクティビティ費用などは番組の予算から捻出されます。れっきとしたお仕事としてこのような体験ができるのは、とても業界らしいですね。ちなみに、体験参加は志願制なので苦手なシミュレーションがあったら、きちんと上司に伝えましょう。

 

また、ロケ先が地方や海外の場合はロケハンをせずに、ロケの数日前に現地へ『前乗り』をします。こちらもスタッフだけの下見になります。慣れない地でのロケハンは大変ですが、より非日常を感じる業務のひとつです。

「今月は浅草でロケハン。来月は某テーマパークでの生中継に向けた、テーマパークへのロケハン」というようなスケジュールが日常になるので、ふとした瞬間に「テレビ業界で働いているなぁ」と実感するかと思います。

 

テレビの楽しい仕事②収録

テレビ業界で一番の醍醐味とも言える『スタジオ収録』。ADさんの地道な努力がようやく形となる瞬間です。

番組制作を担当するADさんにやりがいを感じた瞬間や、楽しかったことを聞いてみました!

 

【バラエティ番組担当AD】

■「自身が頑張ったロケのVTRを、著名な芸人さんが見てゲラゲラ笑ってくれたときに『自分の人生の中で、この人をこんなに笑わせられた経験は一生の宝になる』と心から思った

■「自分が参加した「本日のゲストに対する印象は?」というテーマの街頭インタビューVTRをゲストが見て、嬉しそうなリアクションをしてくれた時に『頑張って良かった』と感じました

■「毎回大勢の芸人さんやスタッフが長丁場の撮影に取り組む番組を担当しているのですが、毎回撮影が終わった後は安堵感と達成感で何とも言えない気持ちになります

 

【スポーツ番組担当AD】

■「憧れのスポーツ選手がゲストとして収録に参加した時に、放送にはのせきれないような大会の裏話をたくさんスタジオで聞けたのがめちゃくちゃ楽しかったです!

 

【情報番組担当AD】

■「ドラマの番宣(番組宣伝)で、普段はテレビ局に居ないような大物俳優陣が『電波ジャック』をしに来るシーズンがいつも楽しみです!

普段お仕事でご一緒しないような方が番組に来ると、新鮮かつワクワクしちゃいます」

 

特にお笑いに特化したバラエティ番組のスタッフはスタジオでVTRを流す際、出演者に対して「どうだ!」と挑戦をするような気持ちでいると、とあるADさんは語ってくれました。

同じ「笑いを追い求める職人」としてお互いにリスペクトをしながら、時には戦うような気持ちで仕事をしているのです。ビジネスパートナーとして尊敬する芸人さんとお仕事ができるのは、本当に嬉しいことですね。

ディレクターとして活躍できるようになったら、より番組の演出やキャスティングに関わることができるようになります。なので、下積みのADさんは上記のような体験を通してやりがいを感じながら日々ディレクター昇格にむけて頑張っています。頑張れ、ADさん!!

 

テレビの楽しい仕事③OA後(撮影協力者へのお礼)

番組がOAされた後、ADさんは撮影に協力してくれた一般の方や企業・施設の関係者へ『OAした番組の録画データやディスク』をお礼と共にお送りしています。

その際に、先方からOA後の反響を聞くことも多いので、この業務を通して『自分の仕事が誰かの喜びに繋がったこと』を強く実感することができます。

例えば、

■飲食店「OAされた翌日に、開店前から大行列ができていて…その日の売り上げが平均の2倍になったんです!」

■観光施設「おすすめの観光スポットとして紹介してくれたおかげで、来月の予約が100件以上入りました

■小売「会社のHPにアクセスが集中しすぎて、サーバーがダウンしてしまいました。通信販売用の在庫も現在ゼロで、現場では嬉しい悲鳴が響いています」

などのお言葉をいただいたりします。

 

また先方によっては1月に年賀状を送ってくださったり、自社の商品や自身が作った農作物をお礼としてプレゼントしてくださる方もいて「なんて皆さん温かいんだ…」と身に染みることもしばしば…

様々な業界の方とお仕事を通して交流できる、このお仕事の良さを実感する瞬間です。

 

テレビの楽しい仕事④OA後(視聴者の反応)

番組スタッフがとても気になっているもの。それは『視聴者の反応』です。皆さんは何気なくSNSへ番組の感想を発信しているかもしれませんが、実はそれを食い入るように見ているADさんがたくさんいます。年齢が若い傾向にあるADや若手ディレクターは特に気にしているのではないでしょうか。番組によってはOA後のSNSでの反応を資料にまとめ、定例会議や企画会議でスタッフ全員がその内容を黙読するなんてことも。

普段は見ることができない視聴者の反応をリアルタイムで追えるのは、その場でもらえる通信簿のようです。ADさんからよく聞く喜びの声は「私の頑張ったこの企画で、笑ってくれた」「頑張ってつくった商品の紹介VTRを見て、実際に買ってくれた」といった、視聴者に影響を与えたものが多いです。

もし好きな番組があるとしたら、鍵がついたアカウントではなく公開アカウントで番組名を入れた『番組の感想』を発信してください! その言葉が番組スタッフのやりがいに繋がるかもしれません✨

 

ちなみに、番組公式SNSは番組のADさんが担当してることが多いです。投稿文やアカウントの方向性を決めるのは番組のプロデューサーやディレクターですが、実際に投稿したり、リプライをチェックしてるのは番組のADさんです。なので、事前に有名なSNSのアカウントは開設しておき、操作に慣れておくのが意外と大切です。また、もし興味があれば『どんな時間に投稿するとインプレッションが稼げるのか』『検索されやすいハッシュタグの選び方』といった運用側の研究をしてみるのも◎!

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

バラエティADの基本的な業務の中でも特にやりがいがあって楽しい業務をご紹介しました。

「これがお仕事なの?!」というような業務もありましたね。さらに、約1~1.5カ月をかけてリサーチからOA後対応をこなしてゆくので『ずっと同じことをする』ことが少なく、「毎日同じことをしたくない」という方にはおすすめの業界となっています。

もちろん、煌びやかな業務の裏では、地味で時間のかかる業務をおこなっています。ですが、ご紹介したように番組が完成した時の達成感はひとしおです。ぜひ、みなさんも番組制作の現場に飛び込んでみてはいかがでしょうか??