テレビ番組を制作するうえで欠かせない作業が、ロケで撮ってきた素材を使って収録で演者が見るVTRを作成したり、放送できる形に作り上げたりする編集作業です。
近年は、編集の裏側を見せるYouTuberが増えてきているので、知っている方もいるかもしれません。
今回は、テレビ番組の編集における、ADのお仕事について、編集の流れとともに解説していきます!
編集自体の大きな流れ、専門用語については、こちらの記事も合わせて読んでみてください!
★check!➡テレビ番組の編集の流れと現場でよく使う専門用語
編集所に入る前の作業
①素材を段積みする
編集作業の第一歩としてADが行うのが「段積み」と呼ばれるものです。
どんな番組に行っても基本的に行う作業で、最初の頃はこれに手こずることもしばしば…
段積みとは全ての映像の時系列を揃える作業です。
図のように5つのカメラがあった場合には、その全ての映像が編集ソフト上で同じ時間で進むように合わせます。
この作業をすることで、収録では司会の人が話した時の他の演者のリアクション、ロケでは何かハプニングが起きた時に演者がどのような表情をしたかなど、同時系列で確認することができます。
ここで映像がずれているとディレクターが編集できないので、しっかり合っているか確認してからディレクターに渡すことが大切です。
②オフライン作業中
【素材集め】
段積みした素材を渡し、ディレクターがオフライン作業の間、必要な素材を集めたり、許可取りをしたりします。例えば、話に出てきたものや料理の映像や、使用できる画像を探します。
【テロップ原稿】
テロップと呼ばれる映像に入れる文字を起こすのもこの間にやります。
ディレクターが使う場面や映像を決めて、尺にしたものを確認しながら、文字に起こしていきます。
※『尺にする』とは放送する時間に合わせた長さちょうどに映像を繋ぐことを言います。
それ以外にも使い所を抜いたり、自分の担当した回のPRを作ったりと番組によって作業が異なります。ディレクターと相談しながら自分ができることを探してやっていくことで、ディレクターの助けになるだけでなく、自分のステップアップにつながることがたくさんあります。
③:チェック(プレビュー)
VTRを作るにあたって、社内や放送局の人とのチェックがあります。
より視聴者にわかりやすく、面白く伝わるようにするもので、様々な改善点が話されます。
これは放送時間(=尺)にしながら収録した素材の使う部分を決めていく作業でもあります。
このチェックを元に再度ディレクターがVTRを修正していきます。他にもプロデューサーやAPがコンプライアンスやテロップの誤字脱字をチェックしたり、ADが足りていない素材を確認したりします。
編集所での作業に入る前に確認することで、リスク管理にもなります。
このチェックの際に必要なものが下記です。
・ナレーション原稿
ディレクターが書いてくれる場合もありますが、VTRに入れているものを、タイムを確認しながらADが文字に起こします。番組ごとにフォーマットが違うので要確認です。
・番組表
放送時間に他局でどんな番組が放送されているか確認するためのものです。
・ラップ表
放送時間の中で、何時に何のコーナーをどのくらいの長さ放送するか確認するためのものです。
・番組フォーマット
CMの回数や提供の秒数など、細かい放送時間が記載されているものなどです。
これらの準備もADの仕事です。チェックが行われる際に必要な資料を用意します。
この他にも仮ナレーション(=ナレーターさんに代わってADがナレーションを読む)を撮ったりと番組によって必要なものが違うので、確認して準備することが大事です。
編集所でのADの作業
編集所にいくと1つの箱に対して、2人作業してくれる人がいます。
長時間の作業を一緒にしてくれる人たちなので、はじめにご挨拶してその後もコミュニケーションを取りましょう!
【オペレーター】:プレミアを使って、色味の調整やテロップを実際に映像に入れる人
【アシスタント】:画像を抜いたりテロップの色味やフォントを調整する人
① ハコ立ち上げ
編集所に入る時には、下記のものが必要です。
・プロジェクト:ディレクターが作業した最終のプロジェクト
・素材の入ったHDD:ロケでの素材はもちろん、追加した素材も入っている全部入りもの。
・テロップ原稿:アシスタントに渡して、その原稿通りに仕込んでもらうもの。作業が進んでいくとその原稿のタイムでオペレーターがテロップを入れていってくれる。
最低この3つがあれば箱は進んでいきます。
素材が足りない(=リンクがこない)時にはその素材が一覧になって出てきます。
その時には素材名と同時にパス(=どのHDDのどのフォルダにあるのかわかるもの)が出てくるので、それを元に素材を渡して作業を進めてもらいましょう。
落ち着いたタイミングで、音効さんにVTRとナレーション原稿を送りましょう。
※音効さんとは、VTRに音楽やSE(サウンドエフェクト)をつけてくれる人です。
段階ごとに送って音をつけてもらいますが、まず一度尺になったタイミングで送るようにしましょう。ディレクターのオフライン作業が遅れていて、尺が出ていない場合には、音効さんと相談して送るタイミングを決めましょう。
② 白作り・白完
編集に入って最初にオペレーターが進めるのが白作りです。
色味を調整(=カラコレ)したり、尺に合わせて調整したりします。テロップを入れていない、まっさらな状態なので白と呼びます。これが完成すると白完となります。これを作っている間に、アシスタントはテロップを仕込みます。
1時間の番組の作業をしていると初日はだいたいオペレーターの作業で終わってしまうので、手が空いている時にオペレーター、アシスタントと制作の分のお昼ご飯や夜ご飯を頼みましょう。
番組によって予算が違うので、金額を超えないよう気をつけたり、配達時間を考えて逆算して注文するようにしましょう。長時間の作業を一緒にしてくれる人たちなので、何が食べたいか聞いてみたり、同じようなご飯が続いて飽きたりしないようにしたりと工夫できるといいかもしれません。
③ テロップ入れ
白完ができたら、テロップを入れはじめます。
ディレクターが箱にいる時には入れてもらいながら調整してもらい、いないときは一度全て入れたものを送って、修正原稿を戻してもらって作業を進めます。この時にディレクターに送る時間の目処を伝えておくと、作業のスケジュールが立てられてスムーズに進みます。
④ 各所VTR送付
ここまでも番組内外問わず多くの人たちに送ってきていますが、編集途中でVTRを送って確認してくれる人たちもいます。
・音効
・TK
・コンプラチェック
音効:テロップが入れ終わった時点でも送るようにしましょう。(テロップのタイミングで音がつくため)
TK:タイムキーパーと言って、放送の尺にあっているか確認してくれる人です。
字幕表記:番組の冒頭に四隅のどこかに字幕を表示することが多いです。
最初の数秒間開ける必要があるので、その間はテロップなどがないように編集作業しないといけません。
※そのほかにも配信の告知テロップなど、編集で入れ込むのではなく、放送の時に初めて乗るものがあるので、注意しましょう。
捨てカット:CMに入る時と明けた時に数秒捨てカットを入れます。この捨てカットはトラブルがあった時に黒画面が流れないようにするためのものです。
ある程度ディレクターの直しが反映されたら、各局にある統括部などのコンプライアンスを精査する部署に送ることが多いです。VTRとナレーション原稿を編集途中に送ることで、放送前に問題が起きることを防ぎます。
⑤ MA
素材の音を整音したり、音効からもらった音を合わせたり、ナレーションを録ったり、音に関わることをMAで作業します。
MAで作業してくれる人のことをミキサーと呼びます。ミキサーは最初に整音といって、映像の音(ピンマイクの音とカメラマイクの音、素材の映像の音など)を聞き取りやすいように調整する作業をします。
ADはMAが開いても特にハードなどの搬入は必要ありませんが、ミキサーも番組を一緒に制作してくれているので、オペレーター、アシスタントと同じくご飯を用意します。作業部屋が違うため、たまにご飯を頼み忘れたりしてしまうので注意しましょう。
そのあと音効からできた音をMA室に送ってもらい、合わせる作業をします。
レギュラー番組だと、勝手にMA室に送ってもらえることがありますが、特番や慣れていない人の時にはアドレスがわからなかったり、送信できていなかったり確認不足によるミスも起きやすいので、注意が必要です。いつ頃音が届くのか、MA室にちゃんと届いているかを確認してください。音効から音がきた後ナレーションを録ることが多いので、しっかり時間を逆算しましょう。
⑥ ナレーション録り
ナレーションを録ります。実はここがかなりバタつくことが多いです。
ナレーション原稿の決定稿が時間ギリギリに上がったり、慣れない編集所のコピー機と格闘せざるを得なくなったり、ナレーターさん用の飲み物の買い出しや正しい言い回しやイントネーションの確認などなど…
ここだけヘルプのADにきてもらって対応するなどもありますが、事前に準備しておくことで、効率よく対応できるので、意識して準備しておきましょう。
<1:ナレーション原稿の作成と印刷>
原稿をディレクターがあげた後、番組やナレーターごとにフォーマットに合わせて調整できているか確認することも大事です。
近いタイムなのにページが変わっていると読みにくいですし、忘れがちですがページ番号があったほうが後々ナレーターさんとの会話がしやすくなります。
その確認ができたら印刷にかかります。これもナレーターさんごとに決まりのサイズがあるはずなので確認してから印刷するようにしましょう。
サイズやカラー(カラーと白黒では印刷料金が違うので注意!)はもちろん、コピー機によってはコピーの濃度を設定しないと薄すぎることなどがあります。
また基本的には会議資料のようにホチキスどめはせず、その代わりクリップでとめることが多いです。
原稿は出来次第、最初にミキサーさんに渡します。ミキサーさんは原稿のタイムを見ながらナレーションを録っていくので、先に渡してあげてください。
<2:買い出し>
ナレ録りはミックスに直結することもあり、多くの人が来るため飲み物やお菓子などを用意しておくといいです。また、ナレーターさんごとに好きな飲み物がある場合は用意するようにしましょう。いいコンディションでナレーションを読んでもらうこともいい番組作りの一つのポイントになります。
<3:立会い>
ナレーションを録っている間は全てのナレーションが原稿通りに読まれているかを確認し、わかりにくいイントネーションがあっているかを辞書などで確認します。番組によって細かい方法は異なるため、確認してから参加するといいです。
⑦ ミックス
最終的にミックスという作業を経て納品に向かいます。
ミックスでは様々な音の上げ下げやSEのタイミングの調整、最終的な画の直しなどを確認します。SEも変更したい場合には音効に連絡して音をもらい直します。(番組によっては音効さんもミックスに参加することもあります。)
⑧最終直し・サイド入れ
ミックスで出た修正を直していきます。最後の直しになるので、抜けがないかみんなで確認します。また、放送用であれば直し後にサイド入れを行います。サイドが引き終わったら、完成(完パケ)です。番組のよっては、サイドを入れてからミックスをすることもあります。
⑨納品作業
ここまで終わると、最終的な納品をするディスクに完成したデータをコピーして納品に移ります。基本的にはXDCAMで納品することが多いため、納品場所を確認しておきましょう。それまでに素材表など、必要になる資料は作成しておきましょう。
まとめ
今回は、テレビ番組の編集作業におけるADさんのお仕事について順を追って解説しましたがいかがでしたでしょうか?新人ADさんの最初の難関とも言われる編集作業ですが、慣れてくると必ずこなせるようになります!ここまで様々な工程を説明してきましたが、大切なのはひとつひとつ確認しながら作業を進めることです。初めて入るとわからないことが多くて大変かもしれませんが、しっかりと作業を覚えて2回目以降や特番などでも柔軟に対応できるようにしましょう。