『台本』は、番組制作になくてはならないもの
テレビ業界で使用されている『台本』とは、主にロケやスタジオ収録で『ディレクターが関係者へ撮影の順序や、番組の流れ、企画の意図』を伝えるためのものです。
この関係者とは、番組制作に携わる【出演者】【カメラ】【音声】【照明】以外にも、出演者に同行している【マネージャ】などの間接的に番組制作へ関わる関係者にも配布されます。
ちなみに、台本を作成しているのは番組制作の根幹を担う【ディレクター】です。
ディレクターは番組の演出や映像の編集をおこなうため、台本を通して制作協力者へ「自分はこんな段取りで撮影をしたい」「こういう映像を撮影してほしい」「VTRを流す前に出演者Aさんには、こんな掛け声をしてほしい」と伝えているのです。
台本が無いと、出演者はどのように番組を進行して良いか分からず撮影が円滑に進まないため、台本は番組収録になくてはならないものと言えます。
今回は、そんな『台本』を徹底解説!
映像業界の研究をしたい方や、これからはじめて台本を作成される方必見です!
テレビの台本を徹底解説!
目次
■テレビの台本には、具体的に何が書かれている?(台本イメージあり)
■台本の種類
■ドッキリのような「出演者に知られてはいけない企画」の台本はどうなっている?
■台本が担う『指示書』以外の役割
■台本が存在しない番組もある
テレビの台本には、具体的に何が書かれている?(台本イメージあり)
台本は、基本的にテキストで収録の流れを可視化しています。具体的に書かれている内容は以下のものです。
【喋る出演者の名前と、喋る内容】
■出演者が喋っている「本日も始まりました~」「今回はどんな面白い○○が見つかったのでしょうか?」「ゲストの皆さんです!」のような、『視聴者へ「番組の意図や内容」を分かりやすく伝えるための映像』をつくるための文言が書いてあります。
■出演者とディレクターが事前に収録内容の打合せやアンケートをしていた場合、ディレクターは「あの打ち合わせで聞いたエピソードを、このトークテーマに沿って話してもらいたいな」などと番組の演出を考えることがあります。
その場合、台本には『MC:VTR①終了後、出演者Aさんへ「Aさんは、過去にこんな(VTRみたいな)経験をされたことはあるんですか?」』とキッカケになるような言葉を言うように指示する文言も書いてあります。
【動きの指示】
「VTRに登場したグルメがスタジオ内に運ばれるので、このタイミングで出演者は試食のため席移動をする」「ミニゲームをこの順序・内容でおこなう」などの、『演出上発生する動き』も指示しています。
そして番組スタッフは『バミリ』と呼ばれる、事前に出演者の立ち位置を印した場所へ出演者の誘導を行います。
また、スタッフが試食やフリップを撮影セット内に持っていくような『スタッフの動き』も明記されています。
特に食べ物であれば、ちょうど出来立ての状態でスタジオへ持っていけるのがベストなので、料理を作り始めるタイミングは台本を見て判断しています。
台本の種類
台本は、基本的に『構成台本』と呼ばれています。
その中でも用途によって、ロケで使用されるものは『ロケ台本』、スタジオ収録で使用されるものは『スタジオ台本』、ドラマや再現VTRの撮影で使用されるカット割りが追記されたものは『(カット)割り台本』などと呼ばれます。
さらに、番組スタッフ内で番組のイメージを共有するために作成される『構成』は、ナレーションや演者の欲しいリアクションなどが書いてあります。バラエティ番組で使用されることが多く、この構成をうけて台本を作り分けていきます。
ちなみに、番組の方針によっては、MCが台本通りに読まなければならない場合があります。一方で言うべきポイントをおさえていれば、細かい文言はMCに任せられている番組もあります。
ベテランMCになると、進行(大まかな流れ・どんな着地点を想定しているか)を番組スタッフから伝えられれば、あとは自由に采配を任されている方もいます。番組によって、方針は様々です!
さらに時と場合によっては、ゲストや取材対象者へ、細かく指示された台本ではなく情報を間引いた台本を渡すケースもあります。
番組の方向性や撮影の役割分担を番組スタッフとMCなどが共有できていれば、ある程度は番組収録が成立しますが
ゲストや取材対象者が台本を見てしまうと、人によっては過剰に意識したり、番組サイドが想定しているコメントにとらわれてしまう可能性があります。
出演者には「自分の考えていること、思っていること」を自分の言葉で伝えてもらうのが自然なため、それがスタッフ用の台本に書かれている想定コメントと多少違っていても、大きな問題にはなりません。
この「ナマモノ」である収録をどのように編集するかも、ディレクターの腕の見せ所です!
ドッキリのような「出演者に知られてはいけない企画」の台本はどうなっている?
事前に出演者が今後の展開を知っていては、成立しない企画を収録する場合は、
■出演者が収録外の状態でおこなうドッキリは、台本等をマネージャーなどの関係者にしか配布しない
■出演者が収録中の状態でおこなうドッキリは、肝心の演出部分をダミーの演出に書き換えた専用台本を本人に渡す
というような対応が一般的です。
以前は、テレビ番組でヤラセが行われるケースがありましたが、現在はコンプライアンス違反であるという意識が浸透しており、
■出演者にバレてしまったドッキリはお蔵入りにする
■事実関係が曖昧なものは放送しない
■何人もの関係者がチェックをおこなう など、徹底された管理体制がしかれています。
台本が担う『指示書』以外の役割
台本は「指示書」としての役割以外も担っています。
例えば、『進行や仕込みの抜けがないかのチェック』や『コンプライアンスチェック』を複数人で行えるという点です。
ロケや、スタジオ収録の仕込み段階に、ディレクターとプロデューサーは必ず台本をチェックします。
ディレクターは主に演出・編集面での確認、プロデューサーは主にコンプライアンスチェックを中心におこないます。
主なチェック内容は、「企画やテーマに沿った展開をしているのか」「取材先への撮影許可に漏れがないか」
「無理のないスケジュール(流れ)になっているか」「情報に抜けや間違いがないか」
「コンプライアンス的に問題がないか」「演出が過剰ではないか」などです。
台本があることで、ディレクターは撮影しなくてはならない要素を整理し、対象をどのように撮るのか、撮り方や必要な機材を考えることになります。
台本が存在しない番組もある
基本的に『スタジオで収録するもの』『出演者がいるもの』には台本があります。
例えば、以下のような番組が該当します。
【情報・報道番組】
・ニュース(+ニュース原稿) ・スタジオとVTRで構成されている情報番組
【ドラマ】
全般
【バラエティ番組】
・トーク ・エンタメ情報 ・グルメ ・クイズ ・ゲーム ・お笑い ・音楽
・旅 ・アイドル ・教養 ・料理 ・子ども向け など
【スポーツ】
・スポーツ情報 ・スポーツバラエティ ・中継(進行や選手情報などをまとめた台本)
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いっぽうで、台本がない番組は以下のようなものです。
【情報・報道番組】
・街録などのインタビュー
【バラエティ番組】
・街録などのインタビュー ・ドキュメンタリー
・大まかなロケ先は決まっていても、演者で細かい行き先を決定する番組
・ディレクターが取材対象を探して、そのまま密着するもの
・固定カメラを使用した観測系 など
【スポーツ】
・密着もの
おおまかに、このジャンルのVTR部分には台本がありません。
演出が入って面白いもの・見やすいものには台本があり、予定調和ではない面白さや事実を伝えるものには台本が無い、というふうに考えれば簡単に見分けることができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
業界によって様々な台本が存在しますが、テレビ業界の台本は主にロケやスタジオ収録で使用されるものです。
そして、番組演出や制作進行にまつわる重要なアイテムとなります。
番組制作への関わり方はカメラマンや音声、照明といった技術職から、美術、メイク、衣装など様々です。
その中でも『台本執筆』や『企画考案』といった番組制作の根幹に関わる、【制作の現場】は番組制作の花形と言えます。
このような業界に興味が少しでもあれば、ぜひ企業説明会や番組観覧などに足を運んでみてはいかがでしょうか?