テレビ局の今後は「やばい」と言われているが、本当なのか?
今回は、先行きが危ういと言われているテレビ業界について、以下の3点に沿って解説していきます。
・いまのテレビ局の『お金の稼ぎ方』
・今後テレビ局はどうなってゆくのか、どうしたらよいのか
・テレビ制作をおこなう人材と、収入源、番組制作費の今後
この筆者は、テレビ・メディア業界に人材を派遣している会社で実際に勤務する社員なので、
テレビ局で実際に働く当事者とは異なる『一歩引いた目線』でテレビ業界の今後を、独自の目線で解説します!
そもそも「今のテレビ業界の収入源」って?
テレビ局の収入源は【CM広告】
番組の合間や、番組同士の間に流す【CM(コマーシャル メッセージ)】と呼ばれる広告映像から広告収入を得ています。
番組の視聴者層に、企業側が想定している訴求対象(ターゲット)が多ければ、効率よくアプローチすることができます。
番組と連動したCM(インフォマ―シャル)でも広告収入を得ている
さらに番組内で演者が商品・サービス紹介をおこなう【インフォマ―シャル】という広告の手法も存在します。
番組の出演者が番組のセット内でそのままサービスや商品の紹介をおこなうため、CMと比較して番組本編と地続きな印象が強く、視聴中の違和感を抑えながらPRをすることができます。
さらに、既存のセットを使用できるため映像制作費が抑えられるのも魅力的です。
さらにテレビ局は多くの子会社を擁している
また、番組制作に関わるような会社や、まったくメディア業界とは異なる業界の会社を擁して、多岐にわたる収入を得ています。
例えば、番組制作系の子会社ではテレビ番組やWEB番組の制作をおこなう『映像制作会社』や、カメラや音声などを扱う技術者が所属する『技術会社』、番組のセットや小道具・フリップなどの制作をおこなう『美術会社』などがあります。
他業種事業の子会社では、ホテルや劇場、フィットネスクラブの運営、ビルのメンテナンスをおこなう会社などが挙げられます。
このように、テレビから派生して様々な事業展開をおこなうことで、グループ全体の売上をのばし、仮にテレビの広告収入が不振になったとしても全体の売上の安定化を図ることができます。
テレビ局って本当に今後はやばそう?
結論、民放キー局は大企業なので潰れることは無いが、マネタイズの工夫が必要
今までのように、テレビモニターから番組を観てもらうのは難しい
娯楽の多様化や、サブスクリプション系の動画配信サービスの台頭、番組の海賊版コンテンツ・不正コピーの違法アップロード、スマートフォン・タブレットの普及により、テレビモニターから番組を視聴してもらうのは難しくなりました。
その対策として、民放キー局は互いに出資し合い2015年10月26日に『TVer(ティーバー)』という国内最大級の無料番組配信サービスの提供を開始しました。
これにより、テレビモニターを所有していない層や、番組の放送時間にはテレビを視聴できなかった層をすくい取れるため、時代に合った提供方法を開拓したと言えます。
また、最近では番組独自で『番組アーカイブ』を限定公開しているケースも出てきています。これはサブスク形式で過去の番組アーカイブを見放題にしており、このような番組のコアファンに向けたマネタイズにも成功しています。
今後の広告収入と番組制作費は?
インターネット広告収入が、マスコミ四媒体の広告費(テレビ・新聞・ラジオ・雑誌)を抜いたニュースが2021年に話題となりました。
ですが、その当時のテレビ広告収入の下がり幅と比較して、現在はほぼ一定に安定しています。
さらに、インターネット広告収入の上り幅が少し緩やかになっており、昨今は大幅な差がついているとは言えないかもしれません。
ではなぜ『インターネット広告費』と『マスコミ広告費』の差がそこまで開いていないかというと、TVerなどで視聴者の情報(年齢や性別など)が収集できるようになったため、企業側があらためて「質の高い映像コンテンツへ、よりターゲットへ効果的な広告を打つことができる」とメリットを感じ、テレビ(TVer含む)への出資額が安定したのです。
しかし、番組の制作費に関しては一時期の広告収入の減少に伴い、一度下がった番組制作費は急激に上がることはなく、番組制作は少人数精鋭で対応するスタイルは今後も変わりにくいと推測されます。
その現状に危機感を抱いた番組は、CMの広告収入以外にも
・番組の出演者が登場するライブイベントの開催
・番組オリジナルグッズの展開
・番組をテーマにしたコラボカフェ
・動画配信サービスへの番組アーカイブ配信
・ブルーレイなどのディスク販売
等に取り組み、コンテンツ化によるマネタイズを成功させています。
テレビ業界の人材はどうなる?
実は、サブスクリプション形式で映像配信をしている『ネットフリックス』や『アマゾンプライム』の日本オリジナルコンテンツは、【テレビ業界で今も映像制作をしている】or【していた人材】が主に制作しているため、映像制作会社の人材に関しては『テレビ番組とWEB番組の制作で儲かっている』傾向にあります。
そのため、今後も映像制作のできる人材の需要は安定しているのではないかと考えられます。
しかし、テレビ局に正社員として雇用されている映像制作の人材は、他社の映像制作に関わることができないため、この人材をどう活かすかが今後のテレビ局の命運を分けると言えます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?現在もテレビ局は工夫を凝らして、様々なマネタイズ方法や業績の安定化に取り組んでいます。
さらに、テレビの人材的には「テレビ番組もWEB番組も制作出来ている」ので、お仕事にも困っていません。
しかし、テレビ局は日本のエンタメを担う企業として、今後さらに新しいアプローチ方法を検討・模索する必要があると言えるでしょう。