テレビの視聴率を上げる工夫
皆さんは、普段テレビを観るとき、リモコンのスイッチを押して、どんな番組がやっているのか確認しながら、目に留まった番組を観ることもあるのではないでしょうか。
実は、なんとなく目に留まったその裏には、番組制作陣のこだわりが隠されていたりします。
今回は、番組の視聴率UPのために、制作陣が一体どんな工夫をしているのか、その一部を紹介したいと思います。
テレビ番組を観てもらうための仕掛け
サイドテロップ
サイドテロップとは、テレビ画面の上の方、右端や左端に、番組のタイトルや企画の説明・状況が書かれたテロップのことです。
チャンネルを回したときに、このテロップをみるだけで、途中からみた人にも『何の番組か』、『どんな企画をやっているのか』、『誰が出ているのか』分かりやすく説明するために入れています。
意識していないとあまり覚えていないかもしれませんが、意外と無意識にサイドテロップを読んでいたりするものです。
制作陣は、いかに途中からみた人にもそのまま番組をみてもらえるかということを考え、このサイドテロップに工夫を凝らしています。
文字量やカメラアングルによって、出演者の顔や見せたいものと被ってしまう場合には外す、位置を変えるなどの細かい配慮もしています。
ちなみに、自分のタイミングで何度でも視聴可能なYouTube動画では、サイドテロップはあまり用いられていません。
ただ、情報・解説系のようなジャンルでは、テーマの進行状況や内容をサイドテロップで説明することで視聴者の理解を促すことができるので有効かもしれません。
アバン
アバンとは、番組の冒頭やタイトルの前に、内容をダイジェスト的に入れる映像のことです。
これから始まる番組の面白い部分を抜き出して、視聴意欲を掻き立てる目的で入れています。
このアバンで視聴者を惹きつけることができれば、番組を最後まで観てもらえるきっかけにもなるので、制作陣は力を入れて作っています。
例えば、グルメ番組であれば、一番美味しそうなものを出演者が食べているシーンをいくつかみせたり、旅番組であれば、絶景シーンをいくつかみせたり、途中で豪華ゲストが出る場合には、その登場シーンをみせたり、その日の放送内で一番魅力的なシーンを入れ込みます。
その際、対象物は「?」などの加工で隠して視聴者の興味を更に惹きつける工夫もしています。
CMまたぎの引っ張りの工夫
皆さん、テレビを観ていて、CMが多いなと感じることもあるのではないでしょうか。
テレビ番組を制作する上でCMの割合というのはおおよそ決まっています。
番組制作陣は、番組それぞれで何時代に何本のCMを入れるなどの決まりが書かれたフォーマットに沿って番組を制作しています。
ただ、皆さんも経験があるかもしれませんが、CMに入ると他のチャンネルに変えてしまう人が一定数います。そこで、制作陣は、CMに入る前後で番組を継続して観てもらうための工夫を色々しているのです。
特に、CMに入る直前に「絶対続きを見逃せない!」と思ってもらうために、以下のような工夫をしています。
・クイズや問いかけにして正解を予想させる
例:このあと一体どうなるでしょう?このあと出てくる大物ゲストは誰でしょう?など
・このあとの展開をダイジェストで入れて引っ張る
例:ダイジェストをみせて…このあと予想外の出来事が!、さらにこのあと!…ダイジェストをみせるなど
また、CM明けでは、少し前の展開のダイジェストを入れておさらいをしたりと途中からみた視聴者にも番組内容が理解できる工夫を凝らしています。
フライングスタート
皆さん、『〇時54分スタート』、『〇時56分スタート』などの中途半端な時間から始まる番組があることにお気づきでしょうか。
これも、テレビ局側のひとつの工夫で、他局の番組が終わってCMに入ったタイミングで先に番組をスタートさせて視聴者をつかもうという試みだったりします。
番組によっては、54〜56分の時点で放送内容の紹介やオープニングトークを行なう『ミニ番組』として開始させ、00分から本編が始まるように工夫している場合もあります。
また、前番組の終了直後にCMなどを挟まず、すぐに次の番組を開始するパターンもあります。これも、前番組を観ていた視聴者にそのまま続けて次の番組を観てもらおうという工夫だったりします。
ラテ欄の文言
新聞やテレビ誌の番組表は、ラジオ番組表と合わせて『ラジオ・テレビ欄』略して『ラテ欄』と呼ばれています。
この『ラテ欄』の文言を考えているのは、各局の番組担当者、主にプロデューサーであることが多いです。
この短い文章にも、番組を観てもらうための創意工夫が隠されていたりします。
番組表の字数は厳密で、地上波の場合1行10字、行数は、ゴールデン帯の番組だと1時間6行までなどと決められています。
そこに番組名と概要をわかりやすく詰め込むのは中々の至難の業だったりします。
ゲスト情報や企画内容、ロケ番組であればロケ地、グルメ番組であればグルメ情報などを入れたりしています。
下記はその様々な工夫の一例です。
・できるだけ短く引っ掛かりそうなワードを多く入れる
・「▽」などの記号で区切ったり、「①」などの数字を入れたりすることで、多くのネタを入れ込む
・ひらがなを多用して読みやすくする
・問いかけを使って見どころを入れて興味をそそる
例:「…たどり着けるのか?」「…完食なるか?」「…の正体は?」など
・具体的な数字を入れて興味をそそる
例:「10分で○○できる」、「100種類の花」、「1000万円の絵画」など
・マル秘「㊙」を使って興味をそそる
例:「簡単㊙レシピ」、「㊙節約術」、「㊙美女の美容法」など
・一言で気になる単語を多用する
例:「衝撃!」、「スタジオ騒然!」、「番組独占!」、「激ウマ!」、「爆笑!」など
このように、実は、『ラテ欄』には番組制作陣の技が色々詰まっていたりするので、皆さんも是非テレビの番組表をチェックしてみて下さい。
dボタン
最近テレビを観ていると、よく「dボタンでクイズに答えて豪華賞品をゲットしよう!」などとテロップが出てくることがありますよね。
また、『dボタン』を押すことで、ニュースや天気予報などが見られたり、番組によっては、ドラマ放送中にあらすじを確認することができたりもします。
皆さんも一度はこのリモコンの『dボタン』を押したことがあるのではないでしょうか。
この、『dボタン』からの情報確認やキャンペーン応募は大体がテレビ番組をリアルタイムで視聴していなければ参加できないようになっています。
これも、各番組が視聴者にリアルタイムで番組に参加してもらい、番組を楽しんでもらうために行っている工夫のひとつです。
また、最近は『dボタン』を使った視聴者参加型ゲームを行っている番組もあったりします。
そういった意味でも、リアルタイムで観るからこそ楽しめるコンテンツの一つとして挙げられるのではないでしょうか。
SNS、YouTube
皆さん、最近では、テレビ番組を検索する時、インターネット検索の他にSNS検索をする方も多いのではないでしょうか。
近年、多くの番組が、若者をテレビ番組に引き寄せるために、SNSを多用して番組の魅力を情報発信するようになりました。
番組公式のSNSや公式のYouTubeチャンネルを開設し、そこで番組の告知や、本編のこぼれネタ、放送で紹介した商品やレシピなどの詳細を載せたり、番組のオフショットや撮影風景などを載せたり、フォロワーを増やすために様々な工夫を凝らしています。
また、最近では、番組を観ながら、SNSで感想や番組に対するツッコミを投稿する人も多いのではないでしょうか。特にTwitterでよくみかけるように思います。
筆者も制作の現場にいた頃は、どんな感想が投稿されているのか、放送時間にリアルタイムでSNS内で番組名で検索をかけてチェックしたりしていました。
番組制作側でも、放送中に公式アカウントのIDや投稿用のハッシュタグを表示するなど、SNSでの盛り上がりを意識した動きも強くなっていると思います。
これも、視聴者の関心を高めて、継続的な視聴につなげたり、番組への参加を促したりするような仕掛けになっているのです。
まとめ
今回は、テレビ番組制作陣の視聴率UPのためのこだわりの数々を紹介しましたがいかがでしたでしょうか。
普段、何気なく目に留まったその番組にも、様々な仕掛けが施されていることがお分かり頂けたのではないでしょうか。今回紹介したことを頭に入れながら、いつも観ている番組を観てみると、普段とは違った発見ができて面白いかもしれません。
また、テレビ業界を目指す皆さんは、是非、制作側の視点としても参考にしてみて下さい。